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アートリップ

都市の祝祭 
ナディム・カラム作(東京都目黒区)

出迎える大勢の「友だち」

高さ5メートルの「巨人」は作品のシンボル的存在。奥の壁には文字のように並ぶキャラクターも=横関一浩撮影
高さ5メートルの「巨人」は作品のシンボル的存在。奥の壁には文字のように並ぶキャラクターも=横関一浩撮影
高さ5メートルの「巨人」は作品のシンボル的存在。奥の壁には文字のように並ぶキャラクターも=横関一浩撮影 歩道で踊る「Ninjas」=横関一浩撮影

 風が吹き抜けると、「巨人」の胸の風車がからからと回った。建物の壁や屋上、足元など至る所に、大小様々、色とりどりの奇妙な生き物たちが姿を見せる。

 ここは中目黒駅前に立つ中目黒GT(ゲートタウン)。半具象的なオブジェ群の生みの親は、レバノンのアーティスト、ナディム・カラム(1957~)だ。中心となっているのは、世界各地の都市で展開する「古代の行列」シリーズの101のキャラクターたち。歩道の脇で踊る「Ninjas」は、日本への留学経験もある彼が、この地に加えたオリジナルだ。車止めや、ビル風対策のための防風壁など、一部の作品はアート以外の役割も担う。

 中目黒GTは、駅前の再開発計画の一環で2002年に開業。そばには戦前から続く商店街が隣接する。オブジェは「新参」の施設が街に溶け込むようにと、通路や曲がり角、敷地外の区道まで、10カ所以上に設置。「作品をランドマークにするのではなく、ここで大勢の『友だち』を作って欲しいという思いを込めました」とプロジェクトマネジャーとして制作に携わった小平悦子さん。

 ビジネスマンや買い物客、犬を連れ散歩する人らが絶えず行き交う中、立ち並ぶキャラクターたち。街のにぎわいを一緒に楽しんでいるようにも見えた。

(渡辺鮎美)

 中目黒GT(ゲートタウン)

 地上25階建てのGTタワーを中心に、三つの建物が地上と地下で結ばれた複合施設。オフィス、マンション、店舗、目黒区の図書館やホールがある。敷地内では、ナディム・カラム作品のほかにもアート作品が見られる。雲をイメージしたオブジェや、池の水面を光で表現したインスタレーションは、いずれもフランスの作家ジャン・フランソワ・ブランが手がけた。「都市の祝祭」ともほどよく調和する。日没後(午後5時~11時)はライトアップし、昼とは異なる雰囲気に。

 《アクセス》中目黒駅前。


ぶらり発見

モサエビ丼

 中目黒駅近くを流れる目黒川は、桜の名所として知られる。周辺の川沿い約4キロに約800本が並び、4月8日には「中目黒桜まつり」が開かれる。問い合わせは中目黒駅前商店街振興組合(03・3770・3665)。

 散策のお供におすすめなのが、フツウニフルウツ(TEL6451・0178)のフルーツサンド(写真、1個350円から)。季節限定メニューも楽しめる。午前9時と午後2時に販売((土)(日)(祝)は10時、1時、3時の3回。4月以降変更あり)。駅から徒歩5分。

(2018年3月20日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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