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アートリップ

高炉モニュメント 
倉田光吾郎作(千葉市中央区)

そびえる威容を後世に

サビ加工をし、コントラストをつけた。周囲の舗装は、第5高炉の耐火れんがを使用=伊ケ崎忍撮影
サビ加工をし、コントラストをつけた。周囲の舗装は、第5高炉の耐火れんがを使用=伊ケ崎忍撮影
サビ加工をし、コントラストをつけた。周囲の舗装は、第5高炉の耐火れんがを使用=伊ケ崎忍撮影 高炉部品の一部=伊ケ崎忍撮影

 サッカー少年たちの声が飛び交う公園の一角に、不思議な鉄の物体が。高さは約12メートル。赤茶けた胴体にパイプが張り巡らされている。ジブリ映画の一場面に出てきそうだ。

 実は、鉄鉱石などを熱して鉄を取り出す「高炉」の一部を、約10分の1の大きさで模したもの。川崎製鉄千葉製鉄所(現JFEスチール東日本製鉄所・千葉地区)がかつてここに配していた第5高炉がモデルだ。

 同製鉄所ができたのは、1951年。漁業が中心の千葉市蘇我地区の臨海部が京葉工業地帯へと変貌(へんぼう)する先駆けとなった。第5高炉は65年に完成し、39年間稼働を続けた。

 工場の老朽化に伴い、沖合側へ移転が始まると、旧工場跡地の一部は公園や商業施設へと生まれ変わることに。高炉の姿を残すため、依頼を受けた金属造形作家の倉田光吾郎さん(44)が2008年、本作を制作した。

 厚さ9ミリの鉄板約1・2トン分を加工。パーツ別に溶接し、クレーン車で組み立てた。計画から完成まで、約2年の年月を要したという。

 「高炉の力強さや武骨さがよく再現されていますね」と語るのは、工場写真を多く撮る写真家の大倉裕史さん(42)。第5高炉の撮影に何度も通い、今も、駅前通りの向こうにそびえる威容が目に浮かぶという。「あの姿がこうして後世に残るのは本当にうれしいです」

(下島智子)

 千葉市蘇我スポーツ公園

 市民が気軽にスポーツなどを楽しめ、防災拠点の機能も併せ持つ公園。ジェフユナイテッド市原・千葉のホームグラウンドであるフクダ電子アリーナや、サッカー、テニス、野球などができる各種グラウンド(有料)がある。2022年、整備完了予定。
 同作品は13年、JFEスチールの歴史を紹介する「西山彌(や)太郎・千葉歴史記念館」(同社東日本製鉄所・千葉地区内)と共に、市都市文化賞景観まちづくり部門優秀賞を受賞。

 《作品へのアクセス》蘇我駅から約20分。


ぶらり発見

楽花生パイ

 千葉港めぐり観光船(TEL043・205・4333)は、JFEスチールなど港沿いの工場を海上から眺められる。午前11時半と午後1時半、所要時間約40分。1000円、小学生以下500円。2月23日の「工場夜景の日」にちなみ、24~26日にはダイヤモンド富士ナイトクルーズも。詳細は問い合わせを。

 蘇我駅から徒歩5分、オランダ家蘇我店(TEL226・7211)は、県内に44店舗ある菓子店。人気は蜜に漬けた落花生入りのあんを包んだ「楽花生パイ」(写真、172円)。9時半~8時半。

(2018年2月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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