読んでたのしい、当たってうれしい。

アートリップ

行列 
三木俊治作(横浜市保土ヶ谷区)

サラリーマンか旅人か

台風一過の快晴の下、手をつないでいるようにも見えた=倉田貴志撮影
台風一過の快晴の下、手をつないでいるようにも見えた=倉田貴志撮影
台風一過の快晴の下、手をつないでいるようにも見えた=倉田貴志撮影 全体の大きさは高さ3×幅6メートルほど。作品は「ベリーニの丘」の近くにある=倉田貴志撮影

 オフィスが連なる横浜ビジネスパーク。ビジネスマンたちが連絡通路を絶え間なく行き来する。ふと見ると、中庭にも小さな人の列が――。

 作者は彫刻家の三木俊治さん(71)。半円形の台座に約20センチの人物像が連なる「行列」は、30年以上にわたって手がけてきたシリーズで、全国各地や海外に30作以上ある。本作は、1989年に東京野外現代彫刻展で優秀賞を受賞。横浜ビジネスパークの開館を翌年に控えた関係者の目に留まった。「ユーモアが感じられるアート作品を探していたそうです」と三木さん。

 学生時代に旅したインドで大群衆に圧倒され、彫刻で表現しようと思いついた。ロウを手びねりして人物像の原型を制作。「物語を自由に考えてほしくて」、国籍や性別はそぎ落とした。ローブをまとった旅人や巡礼者にも、あるいは背広姿のサラリーマンにも見える。

 台座は船や地球がモチーフ。サビをあしらい、社会の厳しさを表現した。「僕のイメージは〝宇宙船地球号、行き先は希望〟かな。人は良いほうに向かっていると信じているんです」

 鑑賞者の捉え方は様々だ。出会いと別れ、過去と未来、人口過多への警鐘……。パーク内で働く20代の男性はこう解釈する。「一見不安定なオブジェに集まる人々。平和を求める人間の象徴に感じられました」

(星亜里紗)

 横浜ビジネスパーク

 1990年開設。3棟の超高層オフィスビルと、研究所やスポーツクラブなど中層の建物8棟から成る施設。飲食店や郵便局も備える。パーク内には、人間や動物をテーマにした遊び心のある彫刻10点を配した。「行列」もその一つ。建物群の中央にある円形の公園「ベリーニの丘」は、イタリア人建築家マリオ・ベリーニ氏の作品。日中はオフィスの勤務者や近所の住民が憩う。

 《アクセス》天王町駅から徒歩5分。


ぶらり発見

「ポテトサラダ鯛焼き」

 天王町駅から徒歩6分の洪福寺松原商店街、別名「ハマのアメ横」にある鯛あん亭では、「ポテトサラダ鯛焼き」(150円)が人気だ。商品はツナマヨ入りなどバラエティーに富んでいる。問い合わせは京町食品店(045・332・3211)。

 保土ケ谷駅から徒歩15分、国道1号沿い。10月に旧東海道保土ケ谷宿お休み処がオープンした。旧東海道に関する書籍やパネルを展示。三度笠や道中かっぱなどを着用できる。旅人気分を味わって。(日)のみ利用可能。問い合わせは横浜市保土ケ谷区区政推進課(334・6227)。

(2017年11月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

アートリップの新着記事

新着コラム