森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
暗い部屋に入り、真ん中に立つと、周囲と足元に光線が飛び交った。約5メートル四方の一室とは思えない。まるで宇宙空間だ。
作品は、曹洞宗大本山永平寺を擁する永平寺町の魅力発信交流施設「えい坊館」にある。今年3月、同館のオープンにあたって、館内に「禅」を体験できるコーナーを作ろうと、デジタルアート集団・チームラボに映像制作を依頼した。
「鳥道(ちょうどう)」は、鳥だけが通れるような山中の険しい道を意味する。作品名の通り、よく見ると光は鳥の形だ。その軌跡が光線として残る。「数千~数万の鳥の群れは、一つの巨大な生命体のようにも見えるでしょう」とチームラボの竹内正人さん(27)。見る人を作品世界に没入させて、身体と作品の境界を失い、一体感を得られるよう意図した。
鳥は鑑賞者を感知し、避けて飛ぶようにプログラムされている。常に変化し、二度と同じ場面には出会えない。どうりで見飽きないはずだ。えい坊館の釜田恭次さん(54)によると「1時間以上こもる方もいますよ」。自分探しの一人旅をする若者や、チームラボのファンが埼玉や名古屋など県外からも訪れる。
「中で座禅を組んでみてください」。釜田さんに勧められ、床に座ってみた。神秘的な映像と電子音楽に心を奪われ、雑念が抜け落ち、不思議な心地よさに包まれた。
(星亜里紗)
えい坊館 地域住民の憩いの場とともに、観光客に永平寺町の魅力を発信する施設として開館。1928年から旧松岡村役場として、その後は織物会館としても使用された建物の跡地に造られた。同会館のデザインを踏襲したレトロな外観が特徴。常設の「鳥道」は無料で見られる。午前9時~午後6時。(火)((祝)の場合は翌日)休み。問い合わせはえい坊館(0776・61・0888)。 《アクセス》えちぜん鉄道勝山永平寺線松岡駅から徒歩3分。 |
えい坊館では禅の食文化も味わえる。人気のおかゆセット「さくら」(写真、750円)は、梅干しや生麩(なまふ)の煮付けなどが付く(日替わり)。ゴマ油とだししょうゆを垂らすと風味豊かに。3種の糀(こうじ)ドリンク(350円~)も販売。
松岡駅ホームに立つ案内地図は、ドット絵のゲーム風なデザインが話題を呼んでいる。永平寺町と福井大の学生らが一緒に考案した。キャッチコピーは「あなたがレベルUPする街! 永平寺町」。裏面の九頭竜川のモザイクアートとともに、こだわりの仕様だ。