森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
雨空から一転、真夏のような日差しが照りつけた、6月のある午後。小高い丘の上に立つ神奈川県立上矢部高校へと続く坂道に、巨大な蔦(つた)のような植物が現れた。たどって行くと、同校敷地内の臨時駐車場まで約300メートルにわたっている。
この地上絵を手がけたのは、同校卒業生の淺井裕介さん(36)。動植物をモチーフにした作品で、国内外で活動するアーティストだ。美術陶芸コースを設ける同校の創立30周年の記念事業として2013年、当時の在校生や保護者、教職員ら約200人とともに制作した。
使っているのは横断歩道などの道路標示に用いる白線の素材だ。シート状に加工された素材を配り、葉や花など、好きな形に切り抜いてもらって、余った部分とともに回収した。淺井さんが即興でパーツを組み合わせ、バーナーで焼き付けた地上絵は、山から芽が生え蔦が伸び、成長した先に鳥が訪れ飛び立つというイメージだ。「四つんばいになって地面を触ると、何を配置すべきかインスピレーションが湧いた」と淺井さん。
後輩の活躍も著しい。県内の中高生を対象にした公募展「県美術展中高生特別企画展」には、2年生と3年生が1人ずつ、最高賞を受賞。学舎(まなびや)を巣立つ後輩へのエールは、しっかり届いているようだ。
(尾島武子)
神奈川県立上矢部高等学校 1983年に全日制普通科高校として開校した上矢部高校は、95年に「美術陶芸コース」を設置。4基の窯を据え、陶芸が盛んだ。ほかにも、絵画や彫刻、デザイン、映像などを基礎から学ぶことができる。今年度の入学生から専門学科としての「美術科」を新設。さらに専門的な学習内容が履修できるという。問い合わせは同校事務室(045・861・3500)。 《アクセス》JR戸塚駅西口からバスで約10分(午後2時以降は約20分)。「上矢部高校」下車、徒歩3分。 |
最高賞の「神山財団賞」をはじめ、上矢部高校の生徒4人が受賞した「県美術展中高生特別企画展」は、みなとみらい線日本大通り駅から徒歩8分の神奈川県民ホールギャラリー(TEL045・662・5901)で開催。14日(水)~7月1日(土)、午前10時~午後6時(21日と1日は2時まで)。22、23日休み。
同校から徒歩約5分の文明堂横浜本社工場売店(TEL811・0003)では、パックに詰めたカステラの切り落とし(写真、303円)を、午前9時から販売開始。無くなり次第終了。