森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
日本海を望む丘陵から、子どもたちの元気な声が聞こえてきた。その声の先に、高さの異なる色鮮やかなコンクリート製ブロックを並べて構成した「光のトンネル」がある。
作者は造形作家の天津恵(1945~2016)。結婚を機に津和野町に移住した天津は、子どもを育てながら、自然や環境、宇宙をテーマにした数々のパブリックアートを手がけた。陶板を使った作品が多く、島根県の浜田市世界こども美術館や、東京メトロ銀座線の渋谷駅の通路などに今も残る。
本作は、1996年に始まった石見海浜公園の整備事業に伴い「遊べるアートを作りたい」と自ら申し出た。県の正式依頼を受け、約1年かけて制作。赤、青、黄の鮮明な色彩で、星や太陽、鳥や人間などを描いた。外壁にはめ込んだ陶板レリーフは、萩焼などに使われる伝統的なうわぐすりを使用。色があせないよう高温で焼き、質感にこだわった。
全長約100メートルの曲がりくねったトンネルをくぐると、随所にステンドグラスが埋め込まれ、光が差し込む。天津はそれを「宇宙からの光」と表現した。
「子どもが遊びながら、夢や未来を想像できる作品を作りたい、というのが母の口癖でした」と息子の厚司さん(46)。記者の前を行く女の子は、夢中でステンドグラスをのぞき込んでいた。
(根津香菜子)
石見海浜公園 江津市と浜田市にまたがり、日本海の沿岸5.5キロに広がる県立公園。園内は大きく六つのゾーンに分かれる。「光のトンネル」があるアクアスランドには、落差約16メートルの滑り台「ハヤブサスライダー」などがあり、無料で楽しめる。シロイルカや4種類のペンギンがいる「しまね海洋館アクアス」(TEL0855・28・3900、大人1540円)や、海水浴場なども。 《アクセス》JR浜田駅からバスで15分、「アクアス前」下車徒歩3分。 |
石見海浜公園内にある、はっしー広場では、地元の社中・団体が伝統芸能の石見神楽を披露。古事記などを題材にした演目があり、テンポの速い八調子が特徴。勇壮な舞が無料で見学できる。原則(日)(祝)の午後。詳細は問い合わせを。問い合わせは石央マリン開発(0855・28・3388)。
浜田名物の「赤てん」は、タラなどのすり身に唐辛子を混ぜた練り物。浜田駅から徒歩3分の居食屋きらら(TEL22・1782)では、フライ(写真、324円)が人気。午前11時半~午後2時、5時~11時半。不定休。