森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
南あわじ市の県道沿いにある西路(にしじ)公園。ドライバーが憩う駐車場から少し離れた所に、古代遺跡のようなモニュメントが鎮座する。底面が三角形で、三辺はおよそ20×20×7メートル。7万枚もの淡路瓦が、高さ約5メートルまで積み重なってできている。
公園のある旧西淡(せいだん)町は良質な粘土に恵まれ、約400年の瓦作りの歴史を持つ。だが、住宅の洋風化に加えて、1995年の阪神・淡路大震災で、重い瓦屋根と家屋の倒壊を結びつけて語られた影響もあり、出荷量は減少へ。そんな時に持ち上がったのが、瓦をアピールする公園計画だった。「シンボルとして瓦のモニュメントを作ろうという声が町などからあがり、仕事を任されました」。瓦師の山田脩二さん(77)は振り返る。瀬戸内海の波のように瓦を重ね、ギザギザとした頂部は周辺の山並みとの調和を意識した。
山田さんはかつて、東京を拠点に活躍する建築写真家だった。レンズ越しに見る街並みが人工的で画一的になるにつれて、古来の日本家屋に心をひかれていった。瓦作りを志し、42歳で淡路島に移住。工場での2年間の修業後、屋根瓦や敷き瓦、瓦のオブジェを作ってきた。「様々な場所に瓦の気配を感じて、魅力に触れてほしい」
再生の祈りを込めた甍(いらか)の波が、秋の陽光の中で輝いていた。
(中村和歌菜)
旧西淡町 淡路島の南西部にあり、2005年に周辺3町と合併して南あわじ市になった。地場産業である淡路瓦の代表格は、炭素を付着させて銀色に仕上げるいぶし瓦で、全国2位の出荷量を誇る。01年に設けられた西路公園には、本瓦ぶきのトイレ棟や、瓦をリサイクルしたれんがを敷き詰めた遊歩道もあり、「甍(いらか)公園」の愛称を持つ。 《作品へのアクセス》 神戸淡路鳴門道西淡三原インターからすぐ。 |
江戸時代に発展し、国の重要無形民俗文化財に指定されている淡路人形浄瑠璃。南あわじ市福良の淡路人形座(TEL0799・52・0260)は、伝統を唯一伝える常設館だ。1日4回の公演があり、三味線と義太夫節に合わせて、1体の人形を3人で操る=写真。1500円。(水)のほか臨時休館あり。
淡路人形座からすぐの福良マルシェ(TEL52・1244)には、地元の農産物や海産物が集まる。店頭で購入した刺し身をその場で盛って味わえる「セルフ海鮮丼」(620円~)や、タマネギを自由にトッピングできる「淡路島ピザ」(500円~)が人気。