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アートリップ

Bloom 
エルド吉水作(横浜市港南区)

街の活気を映す“波”

車道からも目を引く=伊ケ崎忍撮影
車道からも目を引く=伊ケ崎忍撮影
車道からも目を引く=伊ケ崎忍撮影 区民文化センター近くのエレベーターロビーには、村上隆の作品「DOB君、こんにちわ」がある=伊ケ崎忍撮影

 京浜急行・上大岡駅を降り、鎌倉街道側に出る。見上げると、駅ビルの上に水色の巨大な何かが乗っているのが目に入る。

 約20年前、駅前再開発で誕生したこの複合ビル。ここに設置された19点のアート作品のひとつ「Bloom」だ。屋上の換気塔を覆うためのオブジェで、高さは約15メートルにも及ぶ。

 駅周辺は、横浜駅や周辺地域の発展に押され、集客が伸び悩んでいた。アート計画は、住民らが特色づくりにと発案。「咲き誇る」という作品名には、生まれ変わる街のエネルギーが重ねられている。

 作者は、商業施設や病院などで多くの造形作品を手がけるエルド吉水(51)。「横浜の海の『波』をイメージしました」という。上へ向かって伸びやかに広がるフォルムはステンレス製とは思えない軽やかさだ。土台となっている建物の壁の波打つような曲線や、側に立つ高層ビルの直線と調和している。

 しかし、設置に際しては思わぬ壁にぶつかった。現場から換気の効率が落ちると指摘されたのだ。上部を開口することにし、そのための工事を巡って会議が重ねられた。「パブリックアートは一人ではできない。関わる様々な人に共感してもらう大切さを知りました」

 作品を見た子どもたちは、ピーマン、食パンと色々な見方をしている。「感じ方は自由。楽しんでほしい」

(小寺美保子)

 ゆめおおおか

 京急、市営地下鉄合わせて一日約20万人が乗降する上大岡駅が入る複合ビル。駅前再開発で1997年に完成した。鎌倉街道に沿ってのびる長さ約300メートルの建物は、百貨店、オフィス、文化施設などが入居している。ビル内外に、奈良美智、村上隆ら日本、アジアの作家18組による上大岡を意識したアート作品が設置されている。ビル内の港南区民文化センターで、アート作品巡りのガイドマップが手に入る。


ぶらり発見

プチ・フルール

 上大岡駅直結の京急百貨店にあるプチ・フルール(TEL045・848・7141)は、同地区で最も古いという、1971年開店の洋菓子店。港南区の花・ヒマワリの種と油を使って、地元の上大岡小学校の児童が昨年考案した「ひまわりクッキー」(写真、675円)などが人気だ。

 駅からバスで約15分。同区と磯子区にまたがる久良岐(くらき)公園は、23万平方メートルの敷地内に散策路や日本庭園があり、秋は紅葉が見られる。17(大正6)年に東京・日比谷に建てられた能舞台や、横浜市電の車両が保存されている。問い合わせは市環境創造局(831・8484)。

(2016年10月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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