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アートリップ

猪おどし 
長谷川仁作(高松市屋島東町)

動物との共存 訴えて

巡礼者が横を過ぎる=伊藤菜々子撮影
巡礼者が横を過ぎる=伊藤菜々子撮影
巡礼者が横を過ぎる=伊藤菜々子撮影 屋島山上駐車場から徒歩約2分の「猪おどし・スズメ」。1本の木に約30羽が揺れる=伊藤菜々子撮影

 高松駅から車で約20分。屋島は山頂が平らな台形状の溶岩台地だ。山上の展望台からは市街地と多島海が一望でき、観光客や四国霊場の巡礼者が訪れる。

 84番札所・屋島寺の森に囲まれた境内に突然、くりくりと大きな目をした「動物」が現れた。3月から始まった瀬戸内国際芸術祭の出品作、長谷川仁(43)の「猪(しし)おどし・オオカミ」だ。体長約3メートル、高さ1.6メートル。ぽってりした体つきは張り子にも似ている。

 きっかけは、制作前に屋島を訪れた長谷川さんが、あちこちで目にした「イノシシ注意!」の看板。過疎化の進む人里に侵入するイノシシは、瀬戸内海の島々に共通する問題だった。「そもそも人間の方が、動物のテリトリーを侵食してしまったことが始まり」。人間に追われた動物の象徴として、オオカミをモチーフにした。しっぽは揺れると音が鳴り「猪おどし」の役割をする。地面の白線は、人間に対し、「動物のテリトリー」を可視化して示した。「人間と動物、双方がテリトリーを意識し、自分が自然の一部だと再認識してもらえたら」

 同芸術祭実行委の今瀧哲之さん(50)は「現代アートは、気づいていないことを気づかせてくれる」と語る。「自然豊かな屋島に合った作品。子どもも、お遍路さんも、つい笑顔になってしまうんです」

(秦れんな)

 瀬戸内国際芸術祭

 2010年から始まり、3年おきに開催される芸術祭。春・夏・秋の3シーズンで、瀬戸内の12の島と二つの港が会場となる。現代アートを通して、島の生活や文化、歴史などを体験できる。秋の会期は10月8日~11月6日。期間中有効の「作品鑑賞パスポート」は5000円。

 《作品へのアクセス》 JR屋島駅からシャトルバスで18分(同パスポートの提示で運賃無料)。山上駐車場から徒歩約3分。


ぶらり発見

屋嶋城

 屋島山上駐車場から徒歩約10分。古代山城屋嶋城(やしまのき)は、唐と新羅の侵攻に備え667年に築いたと「日本書紀」に記されている。14年前に城門を発見、修復工事を経て、全長約50メートル、高さ約6メートルの城壁が今年3月から一般公開。スマートフォンなどで往時の姿を復元できる無料アプリ「甦(よみがえ)る屋嶋城」を配信中。問い合わせは高松市埋蔵文化財センター(087・823・2714)。

 同駐車場から徒歩8分のれいがん茶屋(TEL841・9636)では、海を眺めながら屋島名物「いいだこおでん」(写真、1串400円)を味わえる。午前8時半~午後5時、週1回不定休。

(2016年10月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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