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アートリップ

サン・シスター 
ヤノベケンジ作(神戸市中央区)

太陽を手に 見守るよ

昨年11月、公募で愛称が「なぎさ」に決定=楠本涼撮影
昨年11月、公募で愛称が「なぎさ」に決定=楠本涼撮影
昨年11月、公募で愛称が「なぎさ」に決定=楠本涼撮影 美術館近くにあるオブジェ、椿(つばき)昇作「PEASE CRACKER」=楠本涼撮影

 運河沿いに、高さ約6メートルの巨大な少女がそびえ立つ。JR灘(なだ)駅の南北に伸びる「ミュージアムロード」の南端、兵庫県立美術館の大階段下だ。作家は現代美術家のヤノベケンジ(50)。阪神淡路大震災から20年目の昨年6月、県の依頼で制作した。

 「とびきり可愛い像を作ろうと思った。見る者誰もがうっとりしてしまうような」。東日本大震災後、ヤノベは復興を祈って「サン・チャイルド」という子どもの像を大阪・茨木市に建てた。「サン・シスター」はその姉だ。右手に希望の太陽を持ち、大きな青い目は明日を見据える。「神戸は震災からめざましい復興を遂げた街。どんな災害からも立ち上がる、明るいエネルギーを形にしたかった」

 設置までの道のりは険しかった。地盤が弱い、祭りの邪魔になるなどの理由で候補地は二転三転。完成図を発表すると、少女のスカートの中が見えるのは青少年の教育に悪影響では、と懸念の声も上がった。

 「でもいざ完成したら、みんな彼女が大好きになった」と県立美術館の蓑(みの)豊館長(74)。像は今、市民や観光客の人気スポットだ。犬の散歩で前を通った水田亜貴子さん(24)は「夜は黒、夕方はピンクとメタリックな服が空の色に染まるんです」。10月には、前の運河でレガッタが計画されている。歓声が響く秋空の下、水面のゴールを見守る予定だ。

(中村茉莉花)

 ミュージアムロード

 兵庫県立美術館から神戸市立王子動物園までを南北に結ぶ1.2キロの道。「芸術・文化の薫るまちに」という蓑館長の呼びかけにより、2010年に命名された。ルート上に多数のオブジェが点在し、周辺には横尾忠則現代美術館など三つの美術館がある。見晴らしをよくするため、電線の撤去工事も行われた。

 《作品へのアクセス》 JR灘駅から徒歩10分、阪神岩屋駅から徒歩8分。


ぶらり発見

神戸酒心館

 サン・シスターから徒歩2分。2002年に開館した人と防災未来センター(TEL078・262・5050)は、阪神淡路大震災の経験と教訓を伝える施設だ。「1.17シアター」では震災発生時の様子を映像と音響でリアルに再現する。原則午前9時半~午後5時半(入館は1時間前まで)。600円、大学生450円、高校生300円。(月)休み。

 阪神石屋川駅から徒歩8分の神戸酒心館(TEL841・1121)は清酒「福寿」の蔵元=写真。ノーベル賞授賞式の晩餐(ばんさん)会でも振る舞われた純米吟醸を味わえる。蔵から直採りする生酒の量り売りも。午前10時~午後6時。

(2016年6月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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