森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
「あっパトカーだ! ドラえもんもあるよ!」。子どもたちが宝探しをするように見入っているのは、長さ6メートル、高さ3・6メートルのカラフルな魚のオブジェ。胴体には古びたぬいぐるみや玩具、目にフライパン、背びれにハンガーと、無数のゴミが色や形ごとに組み合わされてできている。
瀬戸内の島々を会場に、3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭の出展作として2010年、玉野市宇野港に作られた。手がけたのは、03年に大阪で結成、ゴミをテーマに国内外で活動する「淀川テクニック」の柴田英昭(39)と松永和也(38)だ。
チヌは関西などで使われるクロダイの別名。宇野にほど近い児島湖の漂着ゴミで作った。「その土地だけのチヌが生まれておもしろい」と柴田さん。よく見ると、水田から流れてきたと思われる農業用品や、桃太郎をモデルにした県のマスコットキャラクターの姿も。
日差しや潮風にさらされて劣化するため、3年おきに一部を新しいゴミと交換し「お色直し」する。児島湖のゴミに加え、近隣の家庭からも募集した。参加した森寺克好さん(75)は「ゴミがこれほどまでに輝くことに驚いた」。今年3月のお色直しには、地元の高校生も加わった。作家の柴田さんは「自分たちの手を離れて成長していくようだ」という。
(渡辺鮎美)
宇野港 宇野は、瀬戸大橋が開通した1988年まで四国への玄関口として連絡船が行き来し、栄えた港町だ。今年の瀬戸内国際芸術祭にちなんだ「宇野港連絡船の町プロジェクト」では、国内外の連絡船や港の風景を写した写真を公募。入賞作が宇野港周辺のビルや民家の壁面に大きく展示されている。芸術祭の会期は、夏(7月18日~9月4日)、秋(10月8日~11月6日)。 《作品へのアクセス》 JR宇野駅から徒歩7分。 |
宇野港のフェリー乗り場前にある立体作品「終点の先へ」=写真=も瀬戸内国際芸術祭出展作の一つ。金工作家の小沢敦志が、放置自転車に鉄を溶接し装飾を施した。芸術祭会期中はレンタサイクルとして貸し出される。1日10台限定、600円(保証金2000円が別途必要)。問い合わせは玉野市観光協会(0863・21・3486)。
「宇野のチヌ」のそばに昨年オープンしたのが、かき氷専門店おまち堂(TEL080・1914・0301)。海と作品を眺めながら、自家製フルーツソースのかき氷を味わえる。原則午前11時~午後5時半。(水)休み。