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アートリップ

breath 
豊嶋敦史作(千葉県八千代市)

病棟を照らす銀色の木

3階のガラス窓越しに見た「breath」=横関一浩撮影
3階のガラス窓越しに見た「breath」=横関一浩撮影
3階のガラス窓越しに見た「breath」=横関一浩撮影 造形家竹田康宏作のベンチ「Hello!~こんにちは~」=横関一浩撮影

 ケヤキの緑がまぶしい小高い丘に立つ東京女子医科大学八千代医療センター。赤茶の外壁が温かみを感じさせる。外来棟に入り、エスカレーターに乗ると両側に銀色の樹木が現れた。

 メタリックのカッティングシートで描かれた壁画だ。各全長12メートル、幅5メートル。4階まで吹き抜けのホールに面した壁と窓がキャンバス。「病状が不安でうつむいた人も、上を見上げるように」と制作した彫刻家の豊嶋敦史さん(56)。「生命の木」をテーマに想像上の植物が空へ伸びる姿を表した。天窓から降り注ぐ光を受け、ほのかに輝く。来月に手術を控えた女性(42)は「和みますね」と見つめた。

 壁画は、2006年に開院した際のアートプロジェクトの一環だ。「色やデザインは、人間の心に大きな影響を与える」と語るのは当時の院長伊藤達雄さん(74)。準備段階でチームを発足させ、医師や看護師、検査技師らが2年間、話し合いを重ねた。看護師長の近藤芳子さん(58)は「木漏れ日が差して落ち着けるような空間を考えました」と振り返る。自然の力で人を癒やすことをコンセプトに、木や花がモチーフの作品を依頼。地域住民も立ち寄りやすい、開放的な病院を目指した。

 開院から10年。庭では、近隣の人がベンチで休んだり、子どもが遊んだり。公園のような風景が広がっていた。

(石井広子)

 東京女子医科大学八千代医療センター

 地域の医療機関と連携した医療を担う八千代市の中核的な病院(357床)。約3万平方メートルの敷地に外来棟、入院棟が立ち、8月にヘリポートを備えた新病棟も完成予定。庭にはピーナツ型のベンチ、花のオブジェを設置。小児科外来待合室の壁には森の絵が描かれている。

 《アクセス》 東葉高速八千代中央駅から徒歩約9分、バスで約5分。


ぶらり発見

カフェテリアサンデー

 入院棟1階にあるカフェテリアサンデー(TEL047・450・0641)は、一般の人も利用可能。パスタランチ1020円。店の前に流れる水のせせらぎを聞きながらくつろげるオープンテラスも=写真。午前9時~午後5時((土)(日)(祝)は11時~4時半)まで。

 東葉高速八千代緑が丘駅から徒歩15分。京成バラ園(TEL047・459・0106)は、約3万平方メートルの庭園。毎年5月から6月上旬には、約1600品種1万株が咲く「ローズフェスティバル」を開催。イギリス様式の「自然風庭園」では、四季折々の草花を観賞できる。

(2016年6月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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