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アートリップ

キモノフォレスト 
森田恭通作(京都市右京区)

ドラマチックに「京」演出

幻想的に輝く「キモノフォレスト」。京友禅の柄は15種類=楠本涼撮影
幻想的に輝く「キモノフォレスト」。京友禅の柄は15種類=楠本涼撮影
幻想的に輝く「キモノフォレスト」。京友禅の柄は15種類=楠本涼撮影 竹で覆われたコンコース=楠本涼撮影

 夕暮れ時の京福電鉄嵐山駅に路面電車が滑り込む。一帯には、輝く着物柄の群れ。京友禅の生地を封じ込めたポールが林立する「キモノフォレスト」だ。2013年にデザイナー森田恭通(やすみち)さん(48)が手がけた。

 渡月橋や竹林、世界遺産の天龍寺を有する京都・嵐山。国内屈指の観光地だが、夜は一転、人通りが減って静まりかえるのが常だった。京福電鉄はこの時間帯の地域への集客を狙い、森田さんに嵐山駅のリニューアルを託した。02年に駅舎と正面広場を一新し、間接照明で洗練された空間を演出。第2期工事でキモノフォレストを設置した。

 森田さんが「一目で京都らしさが伝わる」と用いたのが京友禅。直径約20センチ、高さ約2メートルのアクリル製の筒約600本に、伝統的な図柄を収めた。構内一帯に配し、ホーム南側には密集させて小道を造った。夕方になると、中のLED照明が点灯する。「発想の原点は伏見稲荷大社の千本鳥居。鳥居をくぐるように、光るポールの中を歩けたらドラマチックだなと」。当時、事業開発推進室で工事に携わった鈴木浩幸さん(52)によると「最近は電車移動の外国人旅行客も増え、『和』がテーマの駅として喜ばれています」。

 「暗闇に着物柄が映えてきれい」と北京から来たカップル。時間を忘れて着物の森を散策していた。

(中村和歌菜)

 京福電鉄嵐山駅

 京福電鉄嵐山線(嵐電)の拠点駅。2002年の第1期リニューアルから森田恭通さんがデザインを手がけ、柱や天井に約3000本の竹をあしらった。13年には改札口を取り払い、新設した東口への構内通り抜けが可能に。以前から人気を集めていた「駅の足湯」(200円)に加えて、新たなスポット「龍の愛宕池」「さくらの庭・もみじの庭」も登場。電車を利用しない人でも自由に出入りできるようにした。キモノフォレストは一部を除き午後11時ごろまで点灯。


ぶらり発見

嵐山モンキーパークいわたやま

 嵐山駅から渡月橋までは約200メートル。夜間、桂川の流れを利用した小水力発電でLED照明が欄干を照らす。毎年12月には周辺一帯をライトアップする「京都・嵐山花灯路(はなとうろ)」を開催。

 渡月橋を渡ってすぐの岩田山には嵐山モンキーパークいわたやま写真、TEL075・872・0950)がある。ふもと付近の入園口から山道を登ること約20分で展望台に到着。京都の街並みが一望でき、ニホンザル約120匹がくつろぐ。550円。午前9時~午後5時半(11月1日~3月14日は4時半まで、入園は30分前まで)。

(2016年5月31日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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