駅直結といえば商業施設が一般的だが、ここには病院が。便利だけれど、問題はないの?
駅前に東京工業大キャンパスが広がり、住宅や商店街に囲まれた東急大岡山駅。改札を出て振り返ると、緑の植物に覆われた東急病院がそびえる。今年創立70周年。元は駅隣にあった病院を、地下化した駅の上に移転した。
設計を依頼された安田幸一さん(64)は最初難色を示した。駅の上の病院は国内で例がない。振動や騒音対策に加え、電車の通過時に生じる電磁波が患者と医療機器に及ぼす影響にも配慮する必要があった。
しかし建主の東急電鉄は1997年に完了した駅地下化の際、病院の移転を想定。軌道レール下部に電車の振動を吸収するコイルバネを埋め込んでいた。
こうした基礎の上に建物の1、2階の床には磁気を遮断するケイ素鋼板を敷き込み、さらにMRI撮影室は床、壁、天井をケイ素鋼板で囲み、磁気の影響を低減した。
安田さんは、数々の建物を一緒に手がけてきたランドスケープアーキテクトの平賀達也さんと共に、「木漏れ日の中で療養する病院」を目指した。外観が印象的な壁面緑化は、15~20センチ間隔のワイヤを支柱につる性植物をはわせてある。
この提案に当初、病院スタッフの一部から反対の声が上がった。「寝付く(根付く)」に通じる根がある植物は病院ではタブー。植物の葉が朽ちる様子を患者に見せたくない、という配慮もあった。
安田さんと平賀さんは、「植物が見える病室では患者の身体的・精神的苦痛が緩和された」という海外の研究結果をもとに説得。東工大の学生が裏庭で成長実験した常緑、つる性の7種類の植物を選び、4200本を植栽ポットに植えた。窓越しに見える緑のカーテンは目や心を休ませ、夏は3度程度室温を下げる効果も実証された。
約130床のうち約3分の1の個室は、室内の床と同じ高さのウッドデッキが敷かれ、植栽された「プライベートガーデン」が広がる。「自宅に帰ったような気持ちになれますよね」と、東急病院管理部の長澤周平さん(42)は話した。
(田中沙織)
DATA 建築デザイン:安田幸一研究室+安田アトリエ 《最寄り駅》:大岡山 |
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東急病院
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