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ひとえきがたり

知床斜里駅
(北海道、JR釧網(せんもう)線)

記憶に残して 木と光の移ろい

直線だけで構成されたカラマツの壁面。改装から丸7年を経て、木の色にも深みが加わった
直線だけで構成されたカラマツの壁面。改装から丸7年を経て、木の色にも深みが加わった
直線だけで構成されたカラマツの壁面。改装から丸7年を経て、木の色にも深みが加わった 地図

 風が音を立てて吹き付け、粉雪が舞い上がる駅前ロータリーに、長方形の窓から漏れた明かりが暖かな光を投げかける。水平にすらりと伸びた直方体の駅舎が、北の大地の広がりを思わせる。

 2005年に知床が世界自然遺産に登録されたことを受け、08年1月に改装された。デザインを手がけたのは建築家で北海道科学大教授の川人(かわひと)洋志さん(53)。「記憶の駅」がコンセプトだという。「年々表情を変え、年が経つごとに増す木の味わいが、駅を利用する人々の記憶に息づいていくのです」。木口をずらして積まれた北海道産カラマツの外壁が、印象深いリズムを生み出す。

 改装当時の駅長だった大森一さん(54)も「図面を見たとき、インパクトがあると思った」と振り返る。窓から差し込む光とその影は時間や天候によってだんだんと変化し、駅舎内の雰囲気を変えていく。「朝4時ごろ、窓からの光が木漏れ日のように見えました」。次に訪れたときは、また何かが違うんじゃないか。そう利用者に思わせることも狙いだと、川人さんは説明する。

 駅を訪ねた今月上旬、釧網線は風雪のために全線、運休していた。小野寺康弘駅長(53)は4日連続で除雪作業に追われた。駅長になって初めての冬。自然の力を痛感したという。「知床の自然があって、駅があって、人がいる。私たちのおもてなしも含め、記憶に残る駅でなければと思っています」

文 神谷実里撮影 馬田広亘 

沿線ぶらり

 JR釧網線は網走駅(北海道網走市)と東釧路駅(釧路市)を結ぶ166.2キロ。

 3月8日まで「流氷ノロッコ号」が運行中。オホーツク海の流氷を眺めながら、網走駅~知床斜里駅間を走る。オホーツク流氷館(TEL0152・43・5951)は網走駅からバスで約15分。「流氷の天使」クリオネを飼育展示する。展望台からはオホーツク海を一望できる。大人540円。

 5月~10月の期間だけ営業する原生花園駅を降りてすぐの小清水原生花園は天然の花畑。エゾスカシユリなどが楽しめる。

 

 興味津々
さざ波サーモン
 

 駅から徒歩約3分の斜里工房しれとこ屋ではイクラやホタテ貝などの海産物、カラフトマスの珍味「さざ波サーモン」(写真、80グラム550円~)など「知床しゃりブランド認証品」を販売している。食堂も併設。問い合わせは丸あ野尻正武商店(0152・23・2181)。

(2015年2月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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