夏本番。海水浴やサーフィン、ヨットセーリングを楽しむ人々でにぎわう江の島。展望灯台や神社、仲見世通りはカップルのデートコースにもなっている。
玄関口にある片瀬江ノ島駅の駅舎は、竜神や乙姫などが住むという深海の宮殿「竜宮城」を模している。一昨年夏から夜間ライトアップが始まり、朱色の壁や緑色の反り返った屋根が宵闇に浮かぶ。
駅舎は1929(昭和4)年、小田急江ノ島線開業時にできた。竜宮城のようなデザインにしたわけは小田急の社史などにも書かれていない。江の島の江島(えのしま)神社に竜神伝説があるからとの「説」もある。新江ノ島水族館前の集合住宅を手がけた建築家の染谷正弘さん(62)はこう推測する。「東京から海に向かって走る鉄道の終着駅に、竜宮城のある別天地があるという思いがこの形にさせたのではないか」
しかし植栽も街灯もない駅前について水族館社長の堀一久さん(49)は「華やかさがなくて寂しい」と不満げだ。2003年に「観光地片瀬江ノ島の玄関口を考える会」を立ち上げ、同年と05年に藤沢市に駅前整備を訴えた。
今年6月、2020年東京五輪のセーリング競技会場にヨットハーバーをもつ江の島が決まった。市観光協会専務理事の福島勇さん(64)は「世界に江の島をアピールする好機。『江の島に来たなあ』というワクワク感がもてる駅前にできたら」と期待する。
文 佐藤直子/撮影 谷本結利
小田急江ノ島線は、相模大野駅(相模原市)と片瀬江ノ島駅(神奈川県藤沢市)を結ぶ17駅、27.4キロ。 新江ノ島水族館(TEL0466・29・9960)まで徒歩3分。相模湾の2万匹の魚が泳ぐ大水槽。12月25日までの午後5時~8時、アート集団「チームラボ」が水槽の壁面でデジタルアートの演出も。海水浴場として親しまれる片瀬海岸は、東浜と西浜にわかれ、海の家などが並ぶ。江の島には江島神社の三つの宮(辺津宮(へつみや)、中津宮、奥津宮)があり、それぞれの宮に海の守護神の女神がまつられている。
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江の島の頂上から湘南海岸を眼下に望む展望灯台「シーキャンドル」は江ノ島電鉄が2003年に建設。高さ約60メートル。8月末まで青色にライトアップする。営業時間は午前9時~午後8時、入場料500円、小学生250円。 |