「こんばんは、岐阜県養老鉄道養老駅から生放送でお送りするインターネット番組ヨロストです」。午後8時、ひょうたんの帽子をかぶった女性が、カメラに向かってほほえんだ。後ろのガラス窓越しに、駅ホームの天井から無数にぶら下がる特産のひょうたんが見える。
番組制作を担うのはNPO法人ヨロストのスタッフ11人。勤め帰りに駅に集まり、養老町の魅力や話題を動画サイトのユーストリームなどで1時間配信する。「養老には何もないと地元の人に言われたのが悔しくて」とNPO代表理事の竹内蘭さん(36)。6月から放送日時を変え毎月第1・3金曜午後9時に始める。
スタジオのある駅の一角は、もともと喫茶店だった。昨春閉店してカーテンに覆われたままの状態に町の危機を感じた。それまで町内各所で配信を続けてきたヨロストは養老鉄道と町、企業に協力を要請。今年4月、駅舎に常設スタジオを開設した。水を飲み比べて養老の名水を当てる「利き水」や物産市の報告など「番組のネタはたくさんある」とプロデューサーの吉田圭吾さん(31)は話す。
養老線は赤字経営が続く。養老鉄道の親会社の近鉄は沿線7市町に対し、鉄道存続のためには、自治体が駅などの鉄道施設を保有し、運行を民間に委託する「公有民営化」が最善と提案している。「養老線活性化のためにも知恵を出したい」と吉田さん。番組は5月28日で130回になった。
文 塩見圭/撮影 伊ケ崎忍
養老鉄道養老線は、桑名駅(三重県桑名市)と揖斐(いび)駅(岐阜県揖斐川町)を結ぶ57.5キロ。 養老駅が最寄り駅の養老公園には、滝の水が酒に変わった伝説を持つ養老の滝や現代美術家設計の公園・養老天命反転地、元正天皇行幸遺跡がある。元正天皇はこの地を訪れて元号を養老にしたと言われ、養老町は2年後に養老改元1300年祭を催す計画。問い合わせは町観光協会(0584・32・1108)。 二つ隣の駒野駅から車で約15分、濃尾平野を一望できる臥龍山 行基寺。拝観料400円。
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養老駅は1913年開業。木造平屋の現駅舎は6年後に改築された2代目だ。Yの字が刻印された鬼瓦に洋風の飾り窓のある和洋折衷。構内では100個以上のひょうたんが出迎える。 |