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ひとえきがたり

只見駅
(福島県、JR只見線)

列車よ来い 遠い春を待つ

新潟方面は峠越えの国道252号が毎年冬季に閉鎖され、鉄道が唯一の交通手段。今年は鉄路も雪に閉ざされている=福島県只見町只見
新潟方面は峠越えの国道252号が毎年冬季に閉鎖され、鉄道が唯一の交通手段。今年は鉄路も雪に閉ざされている=福島県只見町只見
新潟方面は峠越えの国道252号が毎年冬季に閉鎖され、鉄道が唯一の交通手段。今年は鉄路も雪に閉ざされている=福島県只見町只見 地図

 深雪の山里にホームがぽつりとたたずんでいた。両脇には2メートルを超える雪の壁。上下線とも列車の運行がなく、人影が消えていた。

 奥会津・只見町は例年以上の積雪に見舞われ、新潟との県境をはさんだ隣の大白川駅との間が雪崩の恐れで2月15日から運転見合わせに。一方、上り方面は会津川口駅までの約28キロで4年近く不通のまま。只見川の渓谷を走る絶景のローカル線は、2011年7月の新潟・福島豪雨で深刻な被害を受けた。85億円かかるといわれる全線復旧の見通しは不明だ。

 ふだんの駅には緑の法被姿で列車に手を振る人たちの姿がある。駅舎内にある只見町観光まちづくり協会のスタッフだ。災害から1年後、下り運転が再開した時に始めた。「毎日列車が来るありがたさを忘れたくなくて」。事務局長の酒井治子さん(34)は当時をそう振り返る。

 「只見線は奥会津の観光事業に欠かせないもの」とJR只見線愛好会の目黒彰一さん(79)、目黒長一郎さん(66)は力を込める。早期復旧をJRや国に働きかけつつ、町民たちで列車を使って出かけるイベントも企画する。

 3月中旬、取材のため会津若松から午前6時の始発で向かったが、途中で雪崩が起きて列車が止まった。代行バス2本を乗り継いでたどり着いたのは午前11時過ぎ。バスからは雪景色の中に傷ついた鉄路が見え隠れした。ブナの木々が芽吹く只見の雪解けはまだ遠い。

文 伊東絵美撮影 谷本結利 

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 JR只見線は会津若松駅(福島県会津若松市)と小出駅(新潟県魚沼市)を結ぶ135.2キロ。不通の会津川口~只見駅間はバス代行輸送が続く。

 只見駅から徒歩約20分の只見町ブナセンター(TEL0241・72・8355)では、昨年ユネスコエコパークに登録された町の豊かな自然環境を紹介。300円。会津宮下駅から車で約5分、道の駅尾瀬街道みしま宿は徒歩約15分の場所に只見線の第一只見川橋梁を望む展望台がある。会津若松駅からバスで約20分の鶴ケ城は4月10日~5月6日、約1千本の桜とともにライトアップされる。

 

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第六只見川橋梁(きょうりょう)

 新潟・福島豪雨では只見線の3本の鉄橋が流失した=写真は第六只見川橋梁(きょうりょう)。只見駅へは会津鉄道の会津田島駅から直行のツアーバスも運行している(要予約)。問い合わせは只見町観光まちづくり協会(0241・82・5250)。

(2015年4月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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