四国のうどん文化の中で育ったから、「麺はモサモサするし、おつゆは真っ黒だし、おそばって何がおいしいんやろう？」って思っていました。このお店に出会うまでは。

　この「玉子とじ」は、かき卵がのっただけのシンプルなおそば。細くてつるっとした麺は喉越（のどご）しが良く、おつゆも薄味でおそばのうまさが引き立ちます。何より卵がふわっふわで、優しい気持ちになれるんです。

　初めて訪れたのは３年ほど前で、まだチャットモンチーというバンドに所属していた頃。アメリカでのツアーにこのお店の奥さんが来てくれていたんです。その後も何かとご縁が重なって通うようになりました。

　昔はおそばって何だか「敷居が高い」印象でした。池波正太郎の随筆に出てくるような。でも、３０代になって少しはおそばに年齢が追いついてきたのかな。ここで大人のおそばの楽しみ方を勉強しています。

◆東京都世田谷区経堂１の２７の１３（ＴＥＬ０３・３４２０・１９８８）。
　９００円。
　午前１１時半～午後２時半（ラストオーダーは２時）、６時～１０時（同９時）。
　（火）と第１・３（水）休み。

　たかはし・くみこ　作家・作詞家。
　１１月４日（月・休）まで、長野県上田市で詩と絵の展覧会「ヒトノユメ」を開催中。