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おんなのイケ麺(めん)

中越典子さん
「武蔵野」のせいろと天丼

「武蔵野」のせいろと天丼
「武蔵野」のせいろと天丼
「武蔵野」のせいろと天丼 中越典子さん

 このせいろと天丼を一緒に頼むのが、作品を一つ終えたときの自分へのごほうびなんです。

 つなぎをほとんど使わないおそばは繊細で香り豊か。天丼はサクッと揚がったエビの衣に甘いたれがとろんとしみていて。ちょっとぜいたくなセットと思いつつも、満腹になりすぎない量なのがいいんです。

 お店に流れるしんとした空気も好き。一人でゆっくり味わう食事の楽しさはここで知りました。のれんの奥で立ち働く姿がちらっと見えたり、天ぷらを揚げる音が聞こえてきたり。そんな気配から、料理に込められる思いが伝わってきます。いまおそばを打つのは先代の娘さん。世代交代も見てきました。

 以前、舞台公演の日に母がお弁当を作ってくれたことがあります。この一つにかけた手間や時間を思うとうれしくて、泣きながら食べました。おいしさって、味プラス人なんですよね。

 

◆東京都目黒区中町1の40の6(TEL03・3715・2241)。
 せいろ700円、天丼2千円。
 午前11時半~午後7時ごろ(そば終了時は早めに閉店する場合も)。(水)(木)休み。


 なかごし・のりこ 女優。
 3月20日まで東京の世田谷パブリックシアターで舞台「藪原検校」に出演中。

(2015年3月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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