秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
車で行って帰ってくるだけの話、なんですよね。核兵器で壊滅した世界で貴重な水を独占する集団に捕らわれた主人公のマックスが、故郷を目指す丸刈りの女性武装隊長フュリオサたちと逃走。追っ手に追われながら砂漠を武装車両で疾走し、最後には悪の親玉を倒す。わかりやすい映画ですが、そこに漫才のボケや大喜利の答えみたいなおもしろさが詰め込んであるんです。
渇きに飢えた民衆の頭上から水を与える場面や「子産み女」の搾乳器、ハンドルが鍵代わりになっている武装車両。高い制作費をかけたボケに見えるんです。監督は、観客だけやなくて映画関係者も笑わしたろと思たんちゃうかな。「何やっとんねん」って。僕らもお客さんはもちろん、舞台袖にいる他の芸人も笑わせたいと思うんです。
描いたのは、仮面ライダーで言ったらショッカーの雑魚キャラに捕らわれたマックス。マックスは主人公なのに、全編通じてずっとかっこ悪いんです。すぐ捕まって丸刈りにされて入れ墨されて、「輸血袋」として車両にがんじがらめにくくりつけられて。途中マックスが追っ手を撃退するくだりがあるんですが、かっこいいはずの戦闘シーンは全てカット。かっこいいのは、冒頭でちらりとも見ずに双頭のトカゲを捕る場面と、最後に村人の中に一人消えていく後ろ姿だけ。徹底してかっこ悪く描いた主人公の扱いがおもしろい。かっこ悪いのがかっこいいんです。芸人でもかっこつけなくなってからおもろくなって売れた人、たくさんいます。かっこつけへんのが、かっこいいんです。
(聞き手・山田愛)
監督・共同脚本=ジョージ・ミラー
制作=米
出演=トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルトほか レイザーラモンHG
1975年、兵庫県生まれ。97年から吉本興業で漫才を始める。特技はイラストで、インスタグラムでは4コママンガを描いている。 |