▼シネマNAVI シネマNEWS一覧
https://www.cinemanavi.com/article_list/
『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』などで知られる作家・佐藤泰志が、函館ではなく関東近郊を舞台に描いた短編小説の映画化『夜、鳥たちが啼く』より、WEB限定の特別予告映像が解禁、さらに各界著名人から絶賛コメントも到着した。
内に秘めた破壊衝動と葛藤する売れない小説家の主人公・慎一を演じるのは『東京リベンジャーズ』『燃えよ剣』『余命10年』など多彩な役柄で観客を魅了し続けてきた実力派俳優・山田裕貴。
離婚を機に、息子とともに慎一のもとに身を寄せるヒロイン・裕子を、近年、内田英治監督、タナダユキ監督、紀里谷和明監督、松本優作監督など、気鋭の監督作品への出演が絶えない演技派女優・松本まりかが演じ、他者との深い関わりを避けて生きることを望みながらも、一人では生きていけない。だからこそ人生を照らす仄かな光を見出そうともがく生身の人間の姿を、静謐かつ鮮烈な熱演でスクリーンに焼き付けた。
脚本は同2作を手掛けた高田亮、そして、高田の助監督時代からの盟友であり、近年『アルプススタンドのはしの方』『愛なのに』『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』などジャンルを問わず話題作を生み出し続け、高い評価を得る鬼才・城定秀夫が監督を務める。
今回解禁されたのは、一方は母屋で、一方は離れのプレハブで暮らすという、いびつな「半同居」生活を続ける中で、次第に惹かれ合っていく慎一と裕子の二人を追ったWEB限定の特別予告。映像冒頭では、「新しい彼女とか作んないの?」と問いかけた裕子に対し、「どうでもいい」とぶっきらぼうに答える慎一の姿が映し出されるが、慎一はその投げやりな言葉とは裏腹に、優しく裕子を包み込み、二人見つめ合う濃厚な時間が流れていく…。あいまいな距離感を保つことを望みながら、埋めがたい孤独と傷を抱えた二人が、自然にお互いを求め合うようになっていく姿が描きだされ、美しく繊細な世界観と大人の色気が溢れる特別予告が到着した。
■「夜、鳥たちが啼く」WEB特別予告
映像内では、プレハブで笑い合いながら飲み明かす二人の姿や、濃厚な一夜が明け、他愛もない会話を交わすふとした瞬間、裕子の一人息子であるアキラも交え、まるで本物の家族ように海水浴を楽しむ様子など、慎一と裕子の様々な表情が切り取られていく。
その中では「俺は、ちゃんとしてないから」「ずるいよね、もう男に振り回されたくないって思ってたのに」と慎一と裕子、それぞれの意味深なセリフが綴られていき、お互いに寄り添いながらも、どこか距離を感じさせる複雑な心情を抱えていることが読み取れる。傷ついてきた過去を抱え、他者との深い関わりを避けてきた慎一と裕子が、もがきながらも一歩踏み出すことを決めた時、二人が見出した答えとは…?
先日行われた完成披露舞台挨拶では、本作で5度目となった互いの共演について、「これまでの共演があったからこそできた空気感になったと思います。初めましての女優さんではできなかったと思うので、恵まれた作品になりました」と松本への絶大な信頼を明かした山田。それに対し松本も「相手役が山田さんだと聞いた時、これは面白くなるな!と思いました。こういう作品のこういう役を演じる山田さんは初めて。人間力が凄まじい方なので、この生命体から何が出てくるんだろう、とすごいワクワクしたんです。」と語り、相手役が山田だったかたこその無限の可能性を感じていたそう。お互いにとって、運命的とも言える特別な共演となった作品だったことを明かしている。
■あたそ(ライター)
人の心の隙間や空白を埋めるのは他者の存在でしかなく、欠点だらけのふたりがどうしようもなく求めあう姿は不完全で、みっともない。だから美しいのかもしれない。佐藤泰志原作の映画に間違いはないと再確認できた。
■新井英樹(漫画家)
振り返って動きを止めてる人間を見つめる「だるまさんがころんだ」ごっこ。動きを止めて抑えていたものを小さく動かす瞬間と動き出した時間に答えはなくても、生きる歓びは見つけられる。人生は小さく期待できる!
■磯村勇斗(俳優)
慎一と裕子の静かに意識し合う距離感が絶妙に美しい。そんな2人の心を露わにしているかのように、鳥の鳴き声が心を揺さぶる。
作家としての慎一のもがき、そして、彼の内側に潜む凶暴性。プレハブの窓から覗く慎一の目から、現在の生き様を伺える。その姿がとても印象的でした。
■宇垣美里(フリーアナウンサー)
どうしたって傷つきたくないから、期待するのをやめた癖して、漂う寂しさを持て余す。不器用な2人が、ただ痛々しくてやるせない。
でもそんな不条理な人間同士だからこそ、癒せる傷があり、結べる関係がある。役者たちの体当たりの演技の先に、歪に光る希望のようなものを見た。
■カツセマサヒコ(小説家)
甘く怠惰な時間が一生続かないことくらい、誰だってわかっている。それでも今この瞬間、傷が少しでも癒えるのなら、僕もまた二人と同じような決断をしていたのかもしれない。
■今日マチ子(漫画家)
母屋と離れ、隣り合う箱を行き来するふたり。孤独な人間が寄り添う一瞬の暖かさは、開いては消える打ち上げ花火のようだ。
■こだま(エッセイスト)
息が詰まる夜の終わりに、こんな光が射す瞬間があるのなら、無様でも生きてみようと思える。多くを語らない、吐き出せない人たちの、はじめの一歩。
■しんのすけ(映画感想TikTokクリエイター)
良い映画は俳優の可能性を観客に示してくれる。次の瞬間何をしてしまうか予想が出来ない心が不安定な主人公・慎一を、あらゆる無表情を使い分けて山田裕貴は演じ切った。人の生活空間がSNSで拡大した今、この映画は"幸福とは何か"を我々に問うてくるのだ。
■遠野遥(作家)
この映画を観たことで、暴力について考える機会を得た。ここのところ暴力について考える機会がなかったという人にこそ、この映画を推薦したい。
■内藤みか(作家)
夜、ひとりで泣いたことがある人に、おすすめしたい映画。シングルマザーは、夜にしか泣けない。子どもが寝静まってからじゃないと、涙を流せない。そしていつもひとりで泣いているから、誰にも気づいてもらえない。世界の隅っこで愛を求めて震えているこのヒロインに深く共感し、のめり込んで観た。
■ものすごい愛(エッセイスト)
重なる後悔、大きな失望、不寛容な周囲、孤独な日々……様々な息苦しさから解放されたがっているはずなのに、彼らはどこまでも刹那的で不自由だった。でも、私たちが口を出していい謂れはない。だって彼らと私たちは無関係な他人なのだから。
■山下紘加(小説家)
映画の中盤で、慎一は服の袖をめくり、クラゲに刺された腕を裕子に見せる。赤く腫れて痛みを伴う痕を、彼女は細い指先でなぞり、舌で舐める。舌の熱さが強張った心をほぐし、傷が癒えていくとともに、新たな関係性が紡がれる。互いが最も心地よいと思える距離を保ちながら共棲していくラストは、新しい生き方の形を提示してくれたようだった。
12月9日(金)新宿ピカデリーほか全国公開