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第42回カンヌ国際映画祭にノミネートされた『仕立て屋の恋』(89)や、第16回セザール賞にて7部門ノミネートされた『髪結いの亭主』(90)など、大人の恋愛劇に定評のあるフランスの名匠パトリス・ルコント監督の最新作『Maigret(メグレ)』(邦題は未定)が、2023年3月17日(金)より公開されることが決定した。
1953年のパリ。ある日モンマルトルのヴァンティミーユ広場で、シルクのイブニングドレスを着た若い女性の刺殺体が発見される。血で真っ赤に染まったドレスには5か所もの執拗な刺し傷。この事件の捜査を依頼されたメグレ警視は、死体を見ただけで複雑な事件になる予感がするのだった……。死体のそばに持ち物類は何もなく、事件を目撃した人もいない。彼女が誰なのか、どんな女性だったのかを知る人もいない。そんな状況で、若い女性には不釣り合いなほど高級なドレスが彼女を特定する唯一の手がかりに。メグレ警視は捜査を進めていくうちに、身元不明の彼女がどうして殺されなくてはいけなかったのか、彼女はどんな人生を送ってきたのかを探っていく。この事件に異常にのめり込んでいくメグレ警視。何が彼をこれほどまでに駆り立てるのか……。
パトリス・ルコント監督が8年ぶりに制作した最新作は、彼の出世作でもある『仕立て屋の恋』の原作者でもあるジョルジュ・シムノンの傑作ミステリー小説が原作。シムノンの代表作である〈メグレ警視シリーズ〉の中でも、深い余韻に包まれる読後感からファンにも人気の高い、1954年に発行された小説「メグレと若い女の死」を基に描かれる。犯人探しのための謎解きだけでなく、身元不明の若い女性の死を中心に、メグレ警視が女性の素性と生涯を探りながら事件の背景に迫っていく様をエレガントに描き出すヒューマンミステリー。唯一の手がかりである血塗られた高級ドレスが導き出す真相とは? 華やかな世界に憧れ、都会へと出てくる女性たちに降りかかる現実の厳しさ。それゆえの貧困と都会の闇が見えてきたとき、メグレ警視の心が動かされていく。
〈メグレ警視シリーズ〉は世界中で数え切れないほど映像化されており、日本でも〈東京メグレ警視シリーズ〉として1978年にテレビ朝日系列で放送。そのときは愛川欽也がメグレを演じたが、この度のルコント版で主人公メグレ警視役を務めるのは、フランスきっての名優ジェラール・ドパルデュー。身長180センチ、体重100キロという原作に忠実な姿に、渋みを漂わせる名演は見どころだ。
シムノン・ファンであることを以前から公言していたルコントにとって渾身の一作である本作。今年で30回目を迎える〈フランス映画祭2022〉で一足早くお披露目される。パトリス・ルコント監督の来日も予定されている。
2023年3月17日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。