▼シネマNAVI シネマNEWS一覧
https://www.cinemanavi.com/article_list/
今年の第17回大阪アジアン映画祭でクロージング作品として上映された、デンマーク、ノルウェー、日本の3ヵ国による国際プロジェクト作品『MISS OSAKA』が、邦題を『MISS OSAKA/ミス・オオサカ』として、2022年10月21日(金)より、アップリンク吉祥寺ほかにて劇場公開されることが決定し、ポスタービジュアル、予告編が到着した。
この世に完璧な幸せをつかみ、理想の人生を築き上げた人は、どれほどいるだろうか。誰もが心の奥底に迷いや満たされない気持ちを抱え、現実と折り合いをつけながら、よりよい生き方を探し求めている。デンマーク、ノルウェー、日本の3ヵ国による国際プロジェクト作品『MISS OSAKA』の主人公イネスも、まさに人生の迷子になっていた。
自分に自信が持てず、漠然と日々をやり過ごしているイネスは、別の誰かになって、別の人生を送りたいと願っている。第17回大阪アジアン映画祭でクロージング作品として上映され、好評を博した本作は、そんな変身願望を叶えるチャンスを得た若い女性の摩訶不思議な旅路を描くヒューマン・ミステリーである。
24歳のイネスは、これといった生きる目的も未来への展望もなく、毎日が憂鬱でしょうがないデンマーク人女性。そんなイネスが恋人ルーカスの出張に同行して訪れたノルウェーで、マリアという日仏ハーフの美しい女性とめぐり合う。ふたりの容姿はとても似ていたが、大阪からやってきたマリアはどこか謎めいていて、イネスにはない自信に満ちあふれていた。
たちまちマリアに心酔したイネスは、雄大な自然のまっただ中で夢のような時間を過ごすが、不慮の事故でマリアが息を引き取ってしまう。ずっと「別の誰かになりたい」と願っていたイネスは、マリアの航空券とパスポートを携えて大阪へ旅立つ。そしてマリアの勤め先のナイトクラブ“MISS OSAKA”に雇われ、未知なる刺激的な人生を踏み出すのだが……。
自由を追い求める若きデンマーク人女性のミステリアスで数奇な旅路を映像化した本作は、異国の地を訪れた主人公が繰り広げる冒険映画であり、アイデンティティーの喪失と再発見を探求した人間ドラマでもある。序盤のノルウェーのパートでは何かに脅えているかのように殻に閉じこもっていた主人公イネスは、来店客にひとときの“夢”を提供する大阪のナイトクラブに足を踏み入れ、身も心も別人のように変貌を遂げていく。
しかし、その偽りの人生もまた“夢”のように儚い。やがて密やかな真実と向き合うイネスの葛藤を通して、「本当の自分とは何者なのか?」という問いを投げかけられた観客は、愛、自由、孤独といった根源的なテーマをめぐる想像力をかき立てられるのだ。
このユニークな企画を立ち上げたダニエル・デンシック監督は、作家としても活躍するデンマークの俊英である。かつて来日した際に大阪の街に魅了されたことをきっかけに本作を構想したデンシック監督は、大阪ミナミなんばの老舗グランドキャバレー“ミス大阪”で撮影を実施。さらに岸和田競輪場やカプセルホテルのほか、高架下、墓地、路地などの観光名所とは異なるロケーションをカメラに収めた。このところブラッド・ピット主演作『ブレット・トレイン』、Apple TV+の「Pachinko パチンコ」、マイケル・マン監督作品「TOKYO VICE」など日本を題材にした海外作品が相次いでいるが、ソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』を彷彿とさせる本作にも、日本文化や大阪という街へのリスペクトがこめられている。
主演を務めたビクトリア・カルメン・ソンネは、2020年のベルリン国際映画祭でシューティング・スター賞を受賞した実力派の若手女優。現実と夢の狭間をたゆたうようなイネスの心の移ろいを繊細なニュアンスで体現し、デンマークのアカデミー賞と呼ばれるロバート賞で主演女優賞にノミネートされた。
ナイトクラブ“MISS OSAKA”を舞台に、愛と疑惑のドラマを織りなす日本人キャストにも演技巧者が揃った。イネスに心奪われていく日本人男性シゲルを、危険な匂いを漂わせて演じるのは、『モテキ』『怒り』『アンダードッグ』などで圧倒的な存在感を示してきた森山未來。“MISS OSAKA”を取り仕切るママさん役に南果歩、イネスの素性に不審を抱く人気ホステスのアヤノ役に『孤狼の血』『はい、泳げません』の阿部純子が扮している。
■『MISS OSAKA/ミス・オオサカ』予告編
10月21日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開