新浜レオンさん
「なごみの米屋」のぴーなっつ最中 地元・千葉の名産、落花生が練り込まれたあんが詰まっていて、食べると地元で過ごした時間を思い出します。
「なごみの米屋」のぴーなっつ最中 地元・千葉の名産、落花生が練り込まれたあんが詰まっていて、食べると地元で過ごした時間を思い出します。
生まれた町はお菓子屋さんがないくらいの田舎で。お菓子と言えば祖母が作ったせんべいとヨモギまんじゅう。そのせいか今でもおせんべいには強い思い入れがあるんです。
このおせんべいは、ワークショップや講演会で訪れる岐阜県の大垣市で出会った田中屋せんべい総本家の「せんべい王子」こと、6代目・田中裕介くんからの差し入れで知りました。
「まつほ」の名前は藤原定家の歌「来ぬ人をまつほの浦の夕凪に焼くや藻塩の身もこがれつつ」が由来。百人一首にも挙げられ、聞き慣れた歌ですが、私はこの歌が一番好き。この「夕凪」というのが面白くて。私は海辺の田舎で育ったこともあって「夕凪」が肌感覚で分かります。風が全くない「凪」は死を予感させる時間。だから、この歌には恋の終わりも香ります。
「まつほ」はこの歌そのものの味です。最初に甘いキャラメル、そこに藻塩、しかし焦がされたキャラメルの苦さ。かみしめると奥にはみその味。この複層的な味わいがこの歌を思い起こさせます。味そのものだけではなく、まつわる物語や背景も一緒に味わうことは、私は日本的な食べ方だと思います。
◆本店 岐阜県大垣市本町2の16(問い合わせは0584・78・3583)。
2枚入り540円。
ネット通販や一部百貨店、東京・銀座三越地下2階で11月17日までの催事「本和菓衆」でも購入可。
やすだ・のぼる 下掛宝生流ワキ方能楽師。
国内外で公演を行う。シュメール神話と日本神話の冥界下りを比較上演するなど新たな試みも。著書「能 650年続いた仕掛けとは」(新潮新書)の英語版が2021年2月刊行予定。