森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
水平線上に陸の景色がゆらゆらと……。富山県・魚津港で見られることの多い蜃気楼。快晴の冬の一日、港を訪れると、その様子をイメージした彫刻に出会った。隣接の商業施設「海の駅蜃気楼」駐車場にそびえるのは、高さ約3・6メートル、全長は約16メートルにおよぶ7体の白御影石群。一体ずつ微妙に異なる形で揺らぐ虚像を表し、濃紺の富山湾に浮かび上がるようだ。
制作者は、魚津市出身の彫刻家大成(おおなり)浩さん(79)。風や蜃気楼を制作テーマとし、「広大な空間に置かれた彫刻が句読点となり、より爽やかに心地よくなるようにしたい」と話す。
設置のきっかけは、2005年に県内で開かれた大成さんの個展。展示された本作を同市に設置したいと、大成さんや同級生、地元の実業家らが立ち上がった。市と協働で台座や敷石を追加し、「蜃気楼の見える街魚津」のシンボルとして09年3月に完成。台座に刻まれた言葉「千年の夢」には、自然豊かな魚津が千年続くようにという思いが込められている。設置に携わった市役所職員の川岸勇一さん(59)は、「作品を背景に、若者たちが結婚する仲間へ贈る動画を撮っているのを見かけ、うれしかった」とほほえんだ。
8月には作品前に特設ステージを設け、ジャズライブが開催される。海から振り返ると雄大な立山連峰がそびえ、爽快な潮風が吹き抜けた。
(上江洲仁美)
海の駅蜃気楼 2004年7月、魚津港の近くに開業した。特産品や鮮魚の販売店、飲食店があり、毎月第2、4日曜日には朝市が開催されて、地元の鮮魚や塩干物などが並ぶ。港を核とした街づくりを促進する国土交通省の「みなとオアシス」に07年3月に登録された。蜃気楼は大気中の温度差で光が屈折を起こし、遠方の風景が伸びたり反転したりした形に見える現象で、上位蜃気楼(春)と下位蜃気楼(冬)がある。 《アクセス》 魚津駅からバスで6分。 |
海の駅蜃気楼の幻魚房(げんげんぼう)(TEL0765・22・0210)では、魚津港でとれた新鮮な海の幸が味わえる。肉厚の刺し身が盛られた海鮮丼(写真、1500円)や、バイ貝を炊き込んだバイ飯定食(1300円、数量限定)が人気だ。
富山湾では春の味覚としてホタルイカが水揚げされる。作品から車で11分の魚津水族館(TEL24・4100)では、3月中旬~5月下旬にホタルイカの水槽が展示される。午前9時~午後5時。入館料750円。3月15日までの(月)((祝)(休)の場合は翌日)休み。