森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
名画の主人公が猫に置き換わった看板が、旧青梅街道沿いに並ぶ。「第三の猫」「怪猫二十面相」。聞き覚えのある名画のパロディーに思わずくすっと笑ってしまう。
作者はイラストレーターで絵本作家の山口マオさん(60)。マオさんの木版画をもとにインクジェットで印刷した。2015年に12枚制作し、「赤塚不二夫シネマチックロード」に設置したが、台風の被害で現在2枚が修復中だ。「青梅は、萩原朔太郎の小説『猫町』に似ている気がして。いい意味で今風でないタイムスリップしたような町なんです」とマオさん。主人公がさまよう、猫だけが暮らす町、そんな不思議な雰囲気が青梅にはあるという。
制作を依頼したのは、青梅赤塚不二夫会館館長の横川秀利さん(83)。館長室の壁には、1991年から町おこしのため毎年続けている「青梅宿アートフェスティバル」のチラシがずらり。マオさんともその縁で出会った。町には他にも、去年2月に亡くなった映画看板師・久保板観(ばんかん)(本名・昇)さんの作品が設置されている。やはり横川さんが依頼者で、「昭和レトロの町・青梅」を作ってきた仕掛け人だ。「もうじき改元して、振り向けば昭和だったのが平成の垣根越しになる。昭和は遠くなりにけりです」と横川さん。外へ出ると、郷愁を誘う町並みの中、駐車場に2匹の猫が遊んでいた。
(清水真穂実)
赤塚不二夫シネマチックロード 旧青梅街道のうち、青梅駅近くの約1キロにわたる通り。映画看板を描く仕事をしていた赤塚不二夫の「青梅赤塚不二夫会館」、「昭和幻燈(げんとう)館」などの施設がある。かつて青梅には3館の映画館があったが、現在はすべて閉館。名作映画の看板は、店舗の壁面やバス停などに飾られる。2月22日(猫の日)~3月3日、イベント「マオ猫とその仲間たちの青梅猫町」を開催。スタンプラリーや「山口マオ原画展」のほか、3月2、3日は祭りも。 《アクセス》青梅駅から徒歩7分。 |
マオ猫の映画看板向かい、昭和レトロ商品博物館(写真、TEL0428・20・0355)では、昭和30~40年代の菓子や化粧品など生活雑貨が並ぶ。2階には青梅ゆかりの「雪女」の展示も。午前10時~午後5時。入館料350円。(月)((祝)(休)の場合は翌日)休み。
看板から徒歩3分の夏への扉(TEL24・4721)は、昭和初期の建物を使用した喫茶店。懐かしい空間で、手作りのケーキやカレー、本格的なコーヒーを味わえる。午前10時~午後6時。(火)休み。