宮城県の「猫島」として知られる田代島。大漁の守り神として大切にされてきた猫と島の人々の絆に触れ、島の美味を堪能しました。
取材・文/松崎聖子
猫の神様をまつる神社
「ミャアミャア」の声がカモメか猫か分からなかった。港で船を迎える猫、猫、猫。ここ田代島は、住民約80人に対し猫の数が2倍以上の約180匹という、まさに「猫の楽園」だ。
JR石巻駅前からバスと定期船「網地島(あじしま)ライン」を乗り継いで約1時間、島民の大半が70歳代以上。好漁場で知られる金華山沖が近く、昔から漁業で栄えてきた。島内に飲食店はないが、数軒の民宿でとれたての魚を味わえる。訪れた6月初旬、民宿「マリンライフ」の夕食にはワラサやイカ、ドンコ、ツブ貝などが並んだ。季節によりウニ、カキ、アワビも楽しめるという。
島では古来から「猫は大漁を招く」と大事にされ、島中央部には「猫神様」をまつった「猫神社」もある。島南部の仁斗田(にとだ)には約150匹、北部の大泊(おおどまり)には約30匹の猫がいるとされる。「猫島」として注目を集め、2010年には約1万2300人の観光客が訪れたという。
復興に「猫の手」借りる
だが東日本大震災で主力のカキ養殖や漁業が大打撃を受け、被災した島民に猫の世話ものしかかった。そこで地元の有志が立ち上げたのが「田代島にゃんこ・ザ・プロジェクト」。一口1万円で支援金を募り、カキ養殖や猫の世話代に充てる。11年6月から呼びかけたところ、3カ月で1万2千口が集まった。翌年「社団法人田代島にゃんこ共和国」に組織変更。現在は募金の受付を終了し、支援者に「田代島にゃんこ共和国国民証」と養殖のカキの加工品を「お返し」として送っている。
「猫の手を借りたから、恩返ししなきゃ」と同共和国副理事長の濱温(はま・ゆたか)さん(55)。年内に猫用の診療所を作る計画もある。ともに助け合い再生を目指す、人と猫との絆を感じた。
田代島 にゃんこ共和国 募金の受付は終了したが、基金を島の復興や漁の設備、猫の医療費やエサ代などに生かす活動に取り組んでいる。ホームページで島の猫情報を発信中。 |
猫の手ストラップ
仙台のガラス工房が制作。ピンクの肉球が愛くるしい。島内の民宿「漁師民宿 はま屋」(大泊53、TEL0225・98・2620)、「マリンライフ」(仁斗田38、TEL21・4122)ほか、島外では「復興ステーションBAPPA」(石巻市中央2、TEL96・4334)で購入可。500円。売り切れの場合あり。