平安時代の六歌仙の一人で、美人のほまれ高い小野小町。小町の墓と伝えられる五輪塔が残る茨城県土浦市の小野地区で、パラグライダーを体験してきました。鳥になったような気分で関東平野を眼下に眺め、地球の丸みを感じました。
取材・文/小森風美
つくば駅から車で約20分。田畑が広がるのどかな地区に、「こまちパラグライダースクール新治(にいはり)校」がある。この日は校長の望月聖司さん(44)に操作を任せる2人飛行のタンデムに挑戦した。
標高300メートルからテークオフ
離陸場は筑波山系に連なる、標高300メートルの朝日峠展望公園の開けた一角だ。吹き流しで風を読み急斜面を駆け下りる手はずだが、後ろの望月さんや機体とつながれているため、思ったようには速度が出ない。水の中を走るように夢中で前に進むと、いつの間にか足が空を切り体が浮いていた。
高いところに若干の不安があったが、風に乗り機体がふわりと浮く感覚が心地よい。望月さんから「お尻をしまって下さい」と言われ、座席にあたる「ハーネス」に体を沈めた。ミニチュアのような家々が散りばめられた関東平野を下に、実にゆったりとしたぜいたくな遊覧飛行だ。
タンデム飛行は5~10分ほど。望月さんによると、風などの条件が整えば、上級者は上昇気流を乗り継いで高度は1千メートル以上、5時間ほど飛ぶこともあるとか。この日は少し霞がかかっていたが、その名の通りの霞ケ浦も意外に近くに。旋回すると、今しがた駆け下りた山に山桜が見えた。夏には青々とした田んぼなど、空から見る景色は季節によって表情を変える。
観光の拠点「小町の館」
周辺には「小野小町の墓」などの小町伝説が残る。着陸地点からほど近い観光情報館「小町の館」では、常陸秋そばが味わえる食事処や小野小町にちなんだ展示ギャラリーのほか、レトルトカレーなどが並ぶ特産物販売コーナーがある。同市はカレーの街としてアピール中で、毎年11月には市内で「土浦カレーフェスティバル」が開かれる。
この日は風が強くその後は飛べなかったが、ほど良い風を待つ時間がゆるりと流れていた。
こまちパラグライダースクール新治校 問い合わせは新治校(029・862・5355) |
土浦ツェッペリンカレー
土浦市特産のレンコンや、県の銘柄豚を使用したレトルトカレー(540円)。1929年、独の飛行船「ツェッペリン伯号」が土浦に寄港した際、乗組員にカレーを振る舞ったことにちなんで開発された。市内11カ所で販売。
問い合わせは土浦商工会議所(029・822・0391)