三重県松阪市。「松阪牛(まつさかうし)」などで知られるこの街の歴史は、約420年前に始まります。あちこちに歴史の痕跡が見つかる、かつての城下町。3時間程度で歩いて巡ることができます。
取材・文/渡辺鮎美
「松阪牛」で有名な三重県松阪市。かつては伊勢参拝の人々が立ち寄る、伊勢街道の宿場町としても栄えた場所だ。
蒲生氏郷のまちづくり
松阪の歴史は1588年、安土・桃山時代の武将、蒲生氏郷(がもううじさと)がこの地に「松坂城」を築いたことに始まる。海側にあった伊勢街道を城下に引き入れ、楽市楽座を奨励するなど、人々が集まるまちづくりを行った。「後に商人が多く活躍したのも、氏郷さんのまちづくりがあったから」と観光ガイドボランティアの三好三重子さん。今も歴史の痕跡が確認できるという。
城下町を歩き始めると、道の両側に立つ家が、ジグザグに並んでいることに気がついた。見通しを悪くして城を守る、氏郷の工夫だという。当時、町の境界になっていた「背割(せわり)」とよばれる下水道も、氏郷が整備した。
にぎわい伝える商家のかまど
街道沿いには、江戸時代に活躍した商人の屋敷が残る。百貨店「三越」の前身、「越後屋」を創業した三井高利によって大きな繁栄を遂げた三井家。実は松阪が発祥だ。広い屋敷跡の一角は「松阪もめん手織りセンター」へと姿を変え、江戸で人気を集めた名産「松阪木綿」を現代に伝えていた。
小津清左衛門家の旧宅では、両手をいっぱいに広げたくらいの大きな「かまど」を見つけた。当時流行した「おかげ参り」の人々に、食事などの施しを与える「施行(せぎょう)」のためのもの。その大きさが、参拝客のにぎわいを物語る。
城跡を抜け、青々とした生け垣に囲まれた「御城番屋敷」にやって来た。幕末、紀州藩士が暮らした長屋は今も住居として現役だ。田の字にならんだ畳の部屋に、爽やかな風が吹いていた。
歴史の痕跡が溶けこむ街、松阪。約3時間で、400年以上の歴史を 一気に駆け抜けた。
松阪ガイドボランティア友の会 問い合わせは市観光協会(0598・23・7771) |
松阪牛
松阪を代表する「松阪牛」。駅から徒歩約5分のステーキ店・ノエル(TEL26・6410)では、松阪肉のヒレ、モモ、ロースから当日の仕入れ状況に応じて提供する「松阪肉気まぐれステーキランチ」(3500円)が食べられます。スープ、サラダ、ライス、コーヒー付き=写真。