雲海に浮かぶ山頂の城跡―。「日本のマチュピチュ」とも称される景色を求めて、近年観光客が急増しているスポットがある。兵庫県朝来(あさご)市にある竹田城跡だ。国の史跡で、現存する山城の石垣遺構では全国屈指の規模を誇るという。
文・写真/牧野 祥
標高約354メートルに位置し、「日本のマチュピチュ」とも「天空の城」ともうたわれる竹田城跡。2009年度まで年間2万~3万人だった観光客が、10年度は5万2千人、11年度は9万8千人、昨年度は23万7千人と、うなぎ登りに増えている。昨年は、夏に公開された高倉健主演の映画「あなたへ」のロケ地になったことが拍車をかけた。
豪壮な穴太積みの石垣遺構
JR播但線の竹田駅裏手にある登山道から山頂を目指す。約800メートルの道のりだが、岩や石がごろごろとあり、急な斜面で結構きつい。「この道を昔の人も歩いていたんですよ」と、ボランティアガイドの上山哲生さん(62)に励まされ登ること40分。大手門に着いた。山頂の城跡からは、四方を囲む山並みや町なかを横切る円山川が見える。汗ばんだ体に心地よい風が吹き抜け、疲れが吹き飛んだ。
上山さんが「竹田城の最大の魅力」という石垣は、自然石を巧みに積み上げた穴太(あのう)積みで、遺構は南北400メートル、東西100メートルにわたる。これを築いたのは1585年に城主となった赤松広秀とされる。1600年の関ケ原の戦いで敗れた後、廃城に追い込まれた最後の城主だ。「敵から城を守るため、石垣や建物は工夫を凝らした配置にしていたようです」。一段が高い石段や敵を欺くための石垣、城を守る巧妙な造りに感心した。
雲海に浮かぶ幻想的な光景
竹田城は山全体が虎が伏せている姿にも見えることから「虎臥(とらふす)城」の別名もある。地元のアマチュアカメラマン吉田利栄(としひさ)さん(81)は城跡の写真を数万枚と撮影してきた。「雲海に浮かぶ山城は幻想的。雲や光に一度として同じ表情はないので何度見ても飽きないですよ」
朝霧が発生する確率が高いのは9月下旬~11月下旬の早朝。次は雲海に包まれた光景を見てみたい。
特急の臨時停車と「天空バス」の運行 4月27日~6月30日までの土・日・祝限定で、1日3本、特急はまかぜが竹田駅に臨時停車する。それに合わせ、駅から竹田城跡の中腹駐車場などを結ぶ周遊バス「天空バス」も1日8便運行する。 10月からは入場料を 10月から、竹田城跡に入る際には入場料300円が必要。 わだやま観光案内所 TEL079・674・2120 |
たけだ暮らしの交流館
11月には、100年以上前に建てられた元酒造場(写真)を改修した「たけだ暮らしの交流館」が完成する予定。資料館や案内所を備えた観光の核施設となる。竹田駅から徒歩5分。