一反木綿の下をくぐり駅舎を出ると、鬼太郎とねずみ男が水木サンを囲んでなにやら話をしている。20周年を迎えた「水木しげるロード」の始まりだ。
道を歩けば次々と妖怪に行き会う。その数153体。大半が可愛い手のひらサイズだ。「大きくつくるとお化け屋敷になっちゃうから」とデザインを手がけた松江市の造形作家、藤田丈さん(72)。
髪の毛まで緻密(ちみつ)につくり込まれたブロンズ像は、今にも動き出しそうだ。何度もなでられて、つやつやと光沢を放つ人気者も。丸い頭に細い脚の「べとべとさん」もその一人。「頭を完璧な球にすると、ふわふわした感じがなくなってしまう」。妖怪らしさを表現するのは難しい。「水木先生に『おもっしぇー』と言ってもらえた時はうれしいですね」
境港で育った漫画家、水木しげる氏にちなんで街に活気を取り戻そうと発案された妖怪の道。だが、当初は猛反対にあった。「お化けの街だと嫌われて人が来なくなったらどうするってね」と市観光協会会長の桝田知身さん(72)。
それでも1993年、23体の妖怪がなんとか誕生する。翌年、観光客の数は前年の10倍に膨れあがった。以来、妖怪たちは大増殖。2010年のNHKドラマ「ゲゲゲの女房」で人気に拍車がかかり、昨年まで3年連続で250万人を超す観光客を妖怪たちが呼び込んでいる。
「妖怪ワザとしか言いようがないです」。桝田さんが笑った。
文 辻村碧/撮影 塚原紘
JR境線は米子駅(鳥取県米子市)と境港駅(境港市)を結ぶ17.9キロ。全16駅に、北から南まで全国各地の妖怪たちの名が愛称として付けられている。境港駅は「鬼太郎駅」。 鬼太郎列車は鬼太郎のほか、ねずみ男、ねこ娘、目玉おやじなど全6種類。車体はもちろん内装や座席まで妖怪たちの絵で飾られている車両も。 境線は米子駅(愛称ねずみ男駅)の0番線から発車する。ホームではねずみ男の像のほか、頭上には一反木綿も出迎えてくれる。問い合わせはJR米子支社営業課(0859・32・8056)。
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水木しげる記念館(TEL0859・42・2171)は駅から徒歩10分。貸本時代の水木作品や水木さんが収集した妖怪の資料などを展示する。中庭には藤田丈さんデザインの「鬼太郎の家」=写真=も。700円、中高生500円、小学生300円。午前9時半~午後5時。
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