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ひとえきがたり

浅草駅(東京都、東京メトロ銀座線)

雑踏が似合う地下商店街

浅草駅
乗降客が行き交う浅草地下街で人々は昼夜を問わず食事や酒を楽しむ。奥が改札口
浅草駅 地図

 「アジアの匂いがする」。若い夫婦の会話が聞こえた。改札を出て左に続く「浅草地下街」。蛍光灯が照らす約60メートルの通路に、ラーメン屋や居酒屋、占い、理髪、気功の店など約20軒が連なる。カウンターでは男性がギョーザをつまみにビールを飲み、小料理屋ののれんの奥からは歌謡曲が響く。原色のネオンが光るタイ料理店。ベトナム料理店からはパクチーの香り。たしかに、アジア。

 浅草地下街(浅草地下商店会)は1954年、地下改札口から新仲見世商店街に抜ける近道としてつくられた。地下商店会役員の堀章二さんは「もともとは新仲見世の店舗が自店のショールームとして建設した」と説明する。その後、飲食店や物販店が入店。今では日本一古い地下商店街ともいわれる。

 改札を出て「0分」の好立地。夕方のラッシュ時には一日の仕事を終えた人たちが、それぞれ行きつけの店に吸い込まれていく。焼きそば屋「福ちゃん」に通う会社員の木下重幸さん(65)は「飲んですぐ電車に乗れるからいい」、田崎清和さん(58)は「牛すじが絶品」。整体の店では男性が体をもまれて夢見心地。東京スカイツリー開業の影響で観光客も増えたという。週末には若者がタイとベトナムの料理店に行列をつくる。

 「美食と癒やしのストリート」と言ったら言い過ぎか。駅への近道のはずなのに、今日もまっすぐには帰れない。

 文 松崎聖子撮影 馬田広亘

 

 東京メトロ銀座線は渋谷駅と浅草駅を結ぶ14.3キロ。1927年、上野駅と浅草駅を結ぶ東洋初の地下鉄として開業した。

 隣の田原町駅から徒歩5分のかっぱ橋道具街(TEL03・3844・1225)にはプロ用調理器具から食器、業務用食材など約170店が並ぶ。10月8日(火)~14日(月)(祝)は「かっぱ橋道具まつり」を開催し、道具市やセール、抽選会、コンサートなどを実施。

 3駅隣の上野駅から徒歩3分のアメ横センタービル(TEL3831・0069)地下1階には中国や東南アジアなどの食材店が6店集まり、外国語が飛び交う。

  地下街にあるタイ屋台メシ モンティー(TEL03・3841・8668)は「日本人の口に合わせていません」と店主が断言。容赦なく辛いグリーンカレー「ゲーン キィヨワン」(写真手前、昼700円、夜900円)など本場の味が楽しめる。(火)休み。

タイ屋台メシ モンティー

  

(2013年10月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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