平均視聴率52.6パーセントを記録し、社会現象にもなった、NHK朝の連続テレビ小説「おしん」。放映開始から30年の今年、新しく映画となって帰ってくる。
来月公開の映画「おしん」(冨樫森監督)では、山形の寒村に生まれたおしんが、奉公先で苦労しながらも、懸命に生きる少女時代に焦点を当てる。
誰もが知る作品とあって、出演はプレッシャーだった。演じたのはおしんの母・ふじ。「命がけでふじさんに感情移入する、そこに賭けるしかなかったです」と振り返る。2月から山形県内で行われた撮影では、極寒の最上川へ実際に入った。
役を作るより「必死で家族を支えようとする1人の人間として、その場にいた」。おしん役・濱田ここねを前にした現場では、台本では泣かないところで、涙が出てきて驚くことも。奉公に送り出す場面では考えていた以上につらく「これが親の気持ちなのかなと思った」。ふじは、奉公に行かせたくない気持ちと、そうさせている罪悪感との葛藤を常に抱えていると感じた。
自分のことなど考えず、家族のため働き続けるふじの姿は、おしんに生きる覚悟を与える。ふじの生き方に違和感は覚えなかった。貧しい中でも互いを思い合う家族の姿にも共感した。
最初は見るのが怖かったという完成作は、「つらくてもこんなに頑張っている人もいるんだということ。負けないで、前を向いてしっかり歩いていく姿勢を教えてくれる作品」。「新しいおしん」として見てほしいという。
全力で1人の母親、女性を表現した今作。新たな魅力につながる予感がする。
取材・文/小寺美保子
撮影/高嶋佳代
(c)2013「おしん」製作委員会
10月12日(土)全国ロードショー
プロフィール
うえと・あや
1985年東京都生まれ。97年デビュー。現在、TBSドラマ日曜劇場「半沢直樹」に出演中。10月12日から映画「おしん」が公開。12月14日に主演映画「武士の献立」が控える。