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私の描くグッとムービー

ヴィヴィアン佐藤さん
(美術家・ドラァグクイーン)
「わたしはロランス」(2012年)

性別超えた愛 自分らしさ貫く

 ヴィヴィアン佐藤さん(美術家・ドラァッグクイーン)「わたしはロランス」(2012年)

 

 性別を超越した恋人同士の10年にわたる愛の物語。2人が自分たちを見つめ、探し続ける旅の物語でもある。

 カナダのモントリオールで国語教師をしているロランスは、自分の小説が受賞し、同居している彼女フレッドとも順調だった。でも35歳の誕生日を機に「女になりたい。これまでの自分は偽りだった」と打ち明け、女装して出勤するようになる。フレッドはロランスの最大の理解者であろうと決意するけれど……。

 再会した2人が旅に出るシーンが興味深い。カラフルな衣装が空から降ってくる。心が解放された2人のサングラスの下の表情が眩(まぶ)しい。これまでの服を捨て、脱皮する意味が込められていると思う。衣装が降ってくるのは、見方を変えると、2人が地上から別世界へ上昇しているように見える。

 作品には古典から80年代ポップカルチャーまで幅広く引用されている。映画が絵画や音楽、文学などを総合した「第七芸術」であることを見せている。

 原題は「とにかくロランス」。男性とか女性ではなく、自分は自分と宣言し、それを貫く内容だと表す。LGBTといわれる性的少数者はじめ、多様な性が知られるようになったけれど、一人ひとりが、尊厳ある唯一無二の存在ということでは、みんなマイノリティーだと思う。

 イラストは、一人の人間がジェンダーを横断し、様々に分裂し、最終的には時間や記憶を巻き込んで、統合していくイメージで描きました。

聞き手・由衛辰寿

 

  監督・脚本=グザビエ・ドラン
   製作=カナダ・仏
   出演=メルビル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイほか
う゛ぃう゛ぃあん・さとう
 性を超えた独自の感性で作品制作や芸術評論、ライブのプロモートも。「フィガロジャポン」のウェブサイトなどでブログ連載。
(2015年1月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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