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私の描くグッとムービー

ますむらひろしさん(漫画家)
「明日に向って撃て!」(1969年)

アウトローの格好良さに感動

 ますむらひろしさん「明日に向かって撃て!」(1969年)
え・ますむらひろし

 

 1890年代のアメリカ西部に実在した、強盗のブッチ・キャシディとサンダンス・キッド。列車を襲撃し、鉄道会社の刺客から追跡されることになります。

 最初に見た20歳の頃は、ロバート・レッドフォード演じる早撃ちの名手、サンダンスの格好良さにひどく感動しました。さっそく彼のようにひげを伸ばして、モデルガンやガンベルトを買って……。その後、漫画を描くようになると、口ひげを生やした猫を登場させました。雑誌「ガロ」に連載した「ヨネザアド物語」のテンプラという人間のキャラクターも、彼がモデルです。

 崖っぷちに追い詰められ、窮地に立たされても、「(川に)飛び降りよう」と言うブッチにサンダンスは「泳げないんだ!」。追跡の「緊張」と、笑いで起こる「緩和」のバランスがすばらしい映画です。逃走の末にたどり着いた南米のボリビアでは、現地の言葉であるスペイン語が話せないのに銀行強盗をするドタバタが最高。スペインを旅行して、「アリーバ(上に)」や「ドス(二つ)」など、映画のセリフと同じ言葉が聞こえた時はうれしかったですね。

 テレビの再放送などで何度も見るうちに、感じ方が変わった部分もあります。昔はラストシーンに物足りなさを感じていましたが、今では冒頭と同じセピア色に戻る終わり方でよかったんだなって。

 バート・バカラックの劇中曲も大好きで、結婚式で友人に演奏してもらった、思い出の作品です。

聞き手・渡辺鮎美

 

  監督=ジョージ・ロイ・ヒル
   製作=米
   出演=ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロスほか
ますむら・ひろし
 1952年生まれ。代表作に「銀河鉄道の夜」「アタゴオル玉手箱」など。「しんぶん赤旗日曜版」で「宮沢賢治短編集」を連載中。
(2014年6月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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