秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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ハンガリー出身の作家、アゴタ・クリストフの小説三部作の1作目が原作で、映画化は難しいと言われていました。第2次世界大戦下に疎開で両親から離れ、「タダ飯なんぞ食わせないよ。働いてもらう」という祖母と3人で暮らす双子の少年が主人公。過酷な生活を生き延びていく様子を描いています。
薪割りや水くみなど決められた仕事をこなした後に食べられる粗末な食事。2人はつらい毎日から逃げることなく、日記に現実をありのままに記し、色々な訓練を始めます。痛みにこらえるためお互いに殴り合ったり、汚い言葉に傷つかないためお互いをののしったりして、心身を鍛えていくんです。大人をたじろがせるような行動に、胸がすくような感じや痛ましさなど色々な感情を抱きました。
2人は、合わせ鏡のように行動をして、離れがたい存在です。最後の訓練として、2人にとって一番つらい、離れて生きることを決意して迎えるラストは衝撃的でした。
見終わった後、2人は実は1人だったのではと思って三部作全てを読みました。1人ではあまりにつらい現実だから作り出した、心の中だけに存在する分身だったかもしれませんが、はっきりとは分かりませんでした。
だんだん感情を失っていく2人ですが、時々あどけなさをみせるんですよね。雪で遊ぶシーンは雪と仲良しだった自分の子どものころを思い出し、絵にも雪を描きました。
聞き手・土田ゆかり
監督・共同脚本=ヤーノシュ・サース
製作=ドイツ、ハンガリー
出演=アンドラーシュ・ジェーマントほか あじと・けいこ
北海道函館市出身。代表作に絵本「あのこがみえる」(文・舟崎克彦)、「わたしのいもうと」(文・松谷みよ子=ともに偕成社)など。 |