秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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主人公の高校生、杉原は在日韓国人3世。中学まで民族学校に通っていたが、「広い世界が見たい」と日本の高校に進学します。しかし、そこで待っていたのは同級生から向けられる差別的な視線。そんな様子をイラストに描きました。
ある日、杉原はヤクザの息子である友人の誕生日パーティーで、風変わりな少女、桜井と出会って恋をします。それまで国籍なんて関係ない、と言っていたのに、彼女には在日であることをなかなか告白できないんですよね。
「民族」「国家」という言葉の連続に、最初、自分とは別世界の話のような気がしました。でも、誰にでも逆らえない運命があるなって。僕だって日本という国に、この時代に、この親の下に生まれたっていう事実は変えられない。すると杉原のことが身近に思えて、ひたむきに問題と向き合い、成長していく姿に勇気をもらいました。真面目だけど不器用で、どこか自分と似ているんです。同じ在日の友人との交流や、父親から教え込まれるボクシングも、彼をうまいこと成長させています。
杉原が父親に対して言い放った「国境線なんか、俺が消してやるよ」というせりふが好きです。芸術の世界もそう。優れた先人の作品から学ぶことは多いけど、既存のルールや、しがらみに縛られていてはもったいない。そんなものに惑わされず、美術史の中に自分が生きた証しを確かに刻みたい。そう考えながら制作をしています。
聞き手・永井美帆
監督=行定勲
脚本=宮藤官九郎
原作=金城一紀 出演=窪塚洋介、柴咲コウ、山崎努、大竹しのぶほか たかぎ・よう
1981年生まれ。油彩画で、今年の「上野の森美術館大賞展」絵画大賞を受賞。2016年4月27日~5月8日、同館にて新作を展示予定。 |