秋山寛貴さん(お笑い芸人)
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
「マスク」(1994年) 何をやってもうまくいかない主人公・スタンリーがマスクをつけると、ハイテンションな超人に大変身し、アパートから外出するために大暴れする。
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老人ハリーが愛猫トントと車でアメリカ大陸を横断するロードムービーです。
元教師のハリーは、区画整理でニューヨークのアパートを追い出され、近くの長男宅に身を寄せます。しかし居心地の悪さから、長女を訪ねてトントとシカゴへ向かう。さらに初恋の女性など思いがけない人々との交流を経て、やがて次男が住む西海岸にたどり着く。
僕は華々しい表現よりも、淡々とした世界に妙に感じ入ってしまう。この映画も起伏の少ないストーリー。だけど家族関係や住まい、財産といった誰もが抱える問題が盛り込まれていて、人生について考えさせる要素が詰まっています。行くあてのない不安や、出会いの新鮮さという点では、旅と生きることは同じ。この作品は「ファンタジー映画」と評されるようですが、人生そのものがファンタジーみたいなところがありますよね。
印象的なのはハリーが行き先を書いた紙を掲げてヒッチハイクするシーン。アメリカの広漠たる大地、どこまでも続く地平線は憧れです。僕は30代の頃、映画の影響で、ハリーのように車で毎晩モーテルを探しながらアメリカを横断したり、カヌーでミシシッピ川を1300キロ、1カ月かけて下ったりしました。
72歳という人生の終わりに向かう年齢でも、ハリーは旅を通して自分がやれることをやろうと再び生きる活力を得ていく。自分も彼の年齢に近づいている今、改めて見ると、すごく心に響きました。
聞き手・曽根牧子
監督・共同脚本=ポール・マザースキー
製作=米
出演=アート・カーニー、エレン・バースティンほか くろい・けん
1947年生まれ。代表作に「ごんぎつね」「手ぶくろを買いに」(新美南吉作、偕成社)。2003年、山梨・清里に「黒井健絵本ハウス」を開設。 |