「五感で楽しめる」県立美術館 2015年4月24日(金)、「日本一のおんせん県」を名乗る九州・大分に大分県立美術館(OPAM)が開館します。長崎県美術館(2005年)、青森県立美術館(2006年)以来、9年ぶりに新設される県立美術館です。
美術館や博物館に併設されているカフェをどんな時に利用しますか?多くの方は「疲れた足を休めたい」「見てきた作品について語り合いたい」「座ってゆっくり作品を思い返したい」などではないでしょうか。展覧会ごとに特別メニューを提供するカフェもここ数年ぐんと増え、今やカフェは欠かせぬ存在となっています。中でも今回ご紹介する山種美術館の「Cafe椿」は、09年10月に現在の東京・広尾に移転してから現在まで展覧会ごとに特製和菓子を提供し続けています。これまでになんと120種類以上、日本画専門の美術館ならではの試みではないでしょうか。
日本画の展覧会は作品管理のため会期が短いことが多く、山種美術館の展覧会も約1カ月半で終了となってしまいます。そんな限られた期間の各展覧会に、それぞれ5種類も特製和菓子を提供し続けているのですからその情熱たるや並大抵のものではありません。
現在開催中(10月14日まで)の「再興院展100年記念 速水御舟 ―日本美術院の精鋭たち―」でも新たに5種類が用意されています。その中でも注目すべきは速水御舟の代表作である重要文化財「炎舞」の和菓子です。実は過去に二度、製作を試みたものの、美術館からのゴーサインが出ず、試作品段階でボツになってしまったという経緯があるのです。例えば「炎舞」に表現された不動明王のような炎の表現や、リアルな蛾(が)は食べ物のモチーフとしては、明らかに不向きです。(蛾が乗ったお菓子とか口にしたくないですよね…)。今回は、三度目の正直とばかりに、「炎舞」を見事な和菓子に昇華させています。
ちなみに「Cafe椿」の特製和菓子は、青山の老舗菓匠「菊家」に特別にオーダーしたもの。関東風の大きめの和菓子は、展覧会鑑賞後の疲れた体にやさしく、おなかも心も満たしてくれます。
会場で目にしてきた作品を思い浮かべつつ、特製和菓子をおいしく頂く。こんなゆったりとした時間を過ごせるのも展覧会鑑賞のだいご味です。
■「Cafe椿」
http://www.yamatane-museum.jp/museumshop/
■菓匠「菊家」
http://home.h00.itscom.net/kikuya/
和菓子と一緒に何を飲みましょう 「Cafe椿」はドリンクメニューにもこだわりが垣間見られます。昭和7年創業・京都寺町三条の老舗「スマート珈琲店」のブレンドが京都以外で飲めるのはここだけです。また今の時季なら京都・蓬莱堂の抹茶から点てている「冷抹茶」や関西ではポピュラーですが、関東では見かけない「冷やしあめ」(土佐の生姜とニッキを京都の職人さんがブレンドした飲み物)ものどを潤すのにぴったりです。米問屋の奉公から身を起こした山種美術館創立者・山﨑種二氏にちなんで米粉を使った洋菓子メニューも人気だそうです。 |
山種美術館
〒150-0012
東京都渋谷区広尾3―12―36
開館時間:午前10時から午後5時
※入館は閉館の30分前まで
休館日:毎週月曜日(祝日は開館、翌日は休館)、展示替え期間、年末年始
ハローダイヤル:(03)5777―8600
URL:http://www.yamatane-museum.jp/
通常展料金:一般1000円(特別展は料金が異なる)
【筆者プロフィール】
中村剛士(なかむら・たけし)
Tak(タケ)の愛称でブログ「青い日記帳」を執筆。展覧会レビューをはじめ、幅広いアート情報を毎日発信する有名美術ブロガー。単行本『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)の編集・執筆なども。
http://bluediary2.jugem.jp/