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建モノがたり

横浜市寿町健康福祉交流センター(横浜市中区)

人がたたずむ まちの縁側

共用施設はコロナ感染拡大の影響で4、5月休止していたが、軒下には人が集っていた。5月27日に施設の一部を再開=倉田貴志撮影
共用施設はコロナ感染拡大の影響で4、5月休止していたが、軒下には人が集っていた。5月27日に施設の一部を再開=倉田貴志撮影
共用施設はコロナ感染拡大の影響で4、5月休止していたが、軒下には人が集っていた。5月27日に施設の一部を再開=倉田貴志撮影 アルミ板が並ぶ外壁。「寿の街の人のあり方を仮託した」と小泉さん=倉田貴志撮影

簡易宿泊所が立ち並ぶ先に現れる、長いひさしと広場のある大きな施設。どんな風に利用されているの?

 かつては「日雇い労働者の街」と呼ばれた横浜市寿地区。現在は、地区の簡易宿泊所に暮らす56%が65歳以上となり、福祉ニーズの高い街といわれる。

 その一角、診療所や公衆浴場があり「センター」と親しまれた寿町総合労働福祉会館を、耐震やバリアフリーの観点から建て替えた。設計したのは、横浜市で活動する建築家、小泉雅生さん(56)。「街中に人が多い寿地区の雰囲気をそのまま維持できる、『縁側』のような建物にしたいと思った」と話す。

 正面1階のラウンジや2階の診療所、デイケアなどの入り口の前は、軒の深いデッキに。自販機が置かれた周辺には、飲み物を手に休憩したり、広場隅のベンチでは将棋を指したりする姿も見える。

 建て替え前に地域で開いた意見交換会では、先代のセンターにあったのと同規模の広場をと要望があった。これを受けてテニスコート2面分ほど、一部は芝生のスペースが建物前に確保された。「3畳一間ほどの簡易宿泊所に住む人にとって、用がなくてもたたずんでいられる場所は大事じゃないかな」と小泉さん。

 「完成した建物をどう成長させるか。地域の役目よね」と話すのは、自治会事務局長の佐藤真理子さん(67)。気に入っているのは、長いひさしの上部など、茶系のストライプが印象的な外壁だ。色も厚みも均一でない板が並ぶ様子を、「いろんな人がいる寿の街。その一人一人みたい」。

(井上優子)

 DATA

  設計:小泉アトリエ
  階数:地上9階、地下1階
  用途:ラウンジ、図書コーナー、診療所、公衆浴場、市営住宅ほか
  完成:2019年5月

 《最寄り駅》 石川町


建モノがたり

 同センターから徒歩20分のミニシアターシネマ・ジャック&ベティ(問い合わせは045・243・9800)は席数を半数にし、名画やドキュメンタリーなどを上映中。スクリーンが二つあり、「ジャック」は青い座席とシャープな内装、「ベティ」は赤い座席と柔らかい雰囲気が特徴だ。

(2020年7月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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