似鳥美術館
北海道で生まれた家具のニトリが開いた「小樽芸術村」は、20世紀初頭の建物群を利用して、美術品や工芸品を展示しています。
素朴派とは、美術教育を受けていない画家たちの総称です。フランスの画家アンリ・ルソー(1844~1910)を筆頭に、独学ゆえにアカデミックな机上の空論に左右されず、身近な風景や自然を心のままに描いたあたたかみのある作風が特徴です。
当館は「芸術と素朴」をコンセプトに、90年に長野県の諏訪湖のほとりに開館しました。晴れた日は山間に富士山も望める立地と、素朴派作品のやすらぐ風景に通じるものを感じ、ルソーら同派5作家の61点を所蔵しています。
ルソーはパリ市で税官吏を務めながら、40代から日曜画家として絵を描き始めました。独創的な作風は晩年まで評価されず、作品の多くが失われましたが、当館には貴重な9点があります。その一つ、「果樹園」は初期の作品。けむるような独特な筆致が深い秋を思わせます。白と黒のコントラストも鮮やかですね。ルソーの才能をいち早く見抜いたのはピカソでした。本作の裏側には、「敬意を表す」という言葉とともにピカソら前衛画家たちのサインが記されています。
アメリカの素朴派といえば、国民的画家グランマ・モーゼス(1860~1961)。当館では刺繍作品を含む7点を所蔵しています。70代から絵筆を握った「モーゼスおばあさん」の絵は、自然への賛美と愛情に満ちています。「農作業」で初夏の故郷を描いたときには97歳。晩年の作風は、より明るく輝きをおびています。
(聞き手・星亜里紗)
《ハーモ美術館》 長野県下諏訪町10616の540(問い合わせは0266・28・3636)。午前9時~午後6時(10月~3月は5時まで)。2作品は常設展示。1000円。
館長 関たか子 せき・たかこ 1943年生まれ。20代から画商の仕事を始め、国内外のオークションに精力的に参加。90年にハーモ美術館を開館。 |