江戸前期、南蛮船が持ち込んだガラスに魅了された日本の職人が、中国伝来の鉛ガラス素地を用いて日本独自のガラス製品を生み出していきました。ポルトガル語を語源に「びいどろ」「ぎやまん」とも呼ばれた和製ガラスの誕生です。
当館では、前館長の大藤範里(のりさと)が約50年かけて収集した和ガラス製品を、テーマを変えながら常時約100点展示しています。江戸期を中心に昭和初期のものまで、いずれも色かたちの美しさにこだわり抜いてコレクションしたものです。
江戸後期から明治にかけての「玉細工屛風(びょうぶ)」は、藍と透明のガラスビーズ約5万個を七宝つなぎ文様にして縞(しま)模様を表した屛風です。当時の日本には板ガラスを作る技術が無かったため、木瓜(もっこう)形の枠にはめられた緑色のガラスはヨーロッパからの輸入品。贅(ぜい)を極めた作品です。ビーズ編みの屛風越しに花火を見物したという隅田川沿いの料亭で使われたのでは。花火が反射してきらめく様は、さぞ美しかったことでしょう。
19世紀、ヨーロッパでは凝ったデザインのガラス製品が流行していましたが、技術力が劣った日本のガラスは造形が至極シンプル。その素朴さが和ガラスの魅力でもあります。この「緑色蓋物(ふたもの)」はその典型。一見シンプルですが、すっとした線に無駄がなく、装飾の無さが逆に洗練味を与えている。型吹きされた金型による表面のゆらぎと、鉛ガラス特有の奥行きのある緑が非常に美しい一品です。
(聞き手・安達麻里子)
《瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館》 松山市道後緑台7の21(TEL089・922・3771)。午前10時~午後5時(入館は30分前まで)。(火)(水)((祝)の場合は翌日)休み。来館前に要予約。2点は3月10日まで常設展で。1000円。
館長 大藤文江 だいとう・ふみえ 骨董商を営んだ夫の範里氏と共に、2011年に同館を開館。16年の範里氏の逝去に伴い館長に就任。 |