学園ゲートを入ると目の前にそびえる銀色の山。いったい何? なぜこんな色と形にしたの?
洗足学園創立90周年事業にあたって、もともとあったような四角い校舎を建て直す構想も当初はあった。しかし、以前から学園と縁のあった建築家の押野見邦英さん(79)は、「学園の顔となる絶好の場。未来へのメッセージ性のある建物にしてはどうか」と提案。大学側と検討を重ねた結果、演奏会場としても使えるリハーサル室を建てることが決まった。
大事にしたのは「自由で楽しい」雰囲気。「外部に向け『おいでよ』というジェスチャーを感じさせるよう形や色を仕組んだ」と押野見さん。360度どこから見ても表情が違う形は、クラシックだけでなくジャズ、ロック、アニメソングなど、多彩なコースが設置された大学の多様性とも呼応する。
リハーサル室は3フロアに一つずつ。上下に振動が伝わらないよう二重の床の間に防振材を施した。さらに側面のコンクリート壁を垂直方向に大きな波形にして音を拡散。吸音カーテンで残響時間を調節し、「和太鼓のダイナミックさからチェンバロの繊細さまで」対応する。「学生らの演奏機会が増え、より質の高いものになった」と副学長の前田雄二郎さん(40)は話す。プロのオーケストラの練習用に貸し出すこともあるという。
隣接する赤が基調の建物は、事務棟の「eキューブ」。若者たちの創造力をかき立てる狙いで、外壁には珍しい色調を取り入れた。学園の外から見ても目立つ2棟は、今や地域のランドマーク。近くを走るJR南武線のロゴマークにも取り入れられている。
(斉藤由夏、写真も)
DATA 設計:k/o design studio、KAJIMA DESIGN 《最寄り駅》 溝の口 |
学園ゲート正面にあるカフェ、キャトルールワッフル(問い合わせは044・948・7417)は発酵生地のワッフルが人気。生クリームやアイス、果物を添えたスイーツ系のほか、サラダ付きワッフルプレートなど食事メニューも豊富。学生や近隣住民が集う。午前11時~午後6時。(月)休み。