似鳥美術館
北海道で生まれた家具のニトリが開いた「小樽芸術村」は、20世紀初頭の建物群を利用して、美術品や工芸品を展示しています。
白磁に繊細な文様が描かれた有田焼。約400年前、朝鮮から来た陶工・李参平が、有田の泉山で磁器の原料となる石を発見したことが起源といわれます。はじめは中国製品の模倣からスタートして、数百年かけて日本独自の発展を遂げました。当館は初期から現代の有田焼を約1万6千点所蔵し、変遷をたどることができます。
有田焼は伊万里港から積み出されたので「伊万里焼」と呼ばれました。鎖国中は長崎を経由して、中国やオランダ船で海外にも運ばれています。この壺(つぼ)も海外から300年ぶりに有田へ里帰りした輸出品。青・赤・金色を使う金襴手(きんらんで)様式に、緑・紫・黄色が加わって色使いが豪華。上部が八角形と凝ったデザインで、輸出品の中でもグレードが高い。残念ながら出所が明確ではないのですが、同じ絵柄の壺がドイツのシャルロッテンブルク城にあり、別の城の天井画にも登場しています。きっとこの壺も、ドイツ周辺の貴族に購入され、お城で大切に飾られていたと思いますよ。
皿は国内用。当館に寄贈された「柴田夫妻コレクション」から選びました。江戸期の有田焼を体系的に網羅し、国の登録有形文化財に指定されています。本作は、有田焼誕生から約70年経った頃の作品で、素地がより白く、薄くなっている。モチーフも和風になり「間合いの美」が感じられる、大好きな作品です。
(聞き手・笹木菜々子)
《佐賀県立九州陶磁文化館》 佐賀県有田町戸杓乙3100の1(TEL0955・43・3681)。午前9時~午後5時。(祝)を除く(月)休み。無料。大壺は8月末、皿は2月17日まで、常設展で見られる。
館長 鈴田由紀夫 すずた・ゆきお 1952年佐賀県生まれ。同館学芸員を経て2010年から館長に。「明治有田 超絶の美」(世界文化社)を監修。 |