艶(つや)やかで画材用紙への定着がよいクレヨンと、紙の上で自在に混色ができるパステル。双方の特性を兼ね備えたのが「オイルパステル」です。自由画運動の提唱者・山本鼎(かなえ)からクレヨンの改良を求められ、1925(大正14)年に「桜クレイヨン商会(現サクラクレパス)」が開発しました。当館は、91年に社屋に併設。大正・昭和期を代表する画家たちのオイルパステル画約500点を柱に、油絵や水彩画、版画を含め900点超を所蔵しています。
学童用に作られたオイルパステル。第2次世界大戦直後は物資不足から、多くの画家が油絵の具の代用品として着目し、次第に表現手段に取り入れられます。2点のエスキース(下絵)を紹介します。
洋画家・鳥海青児(1902~72)の「皿といちじく」。暗くて渋い色調が美しく、構成がおしゃれですね。オイルパステルならではの、塗り重ねによる色の深みや色使いの模索が感じられます。
一転、色鮮やかな色彩と童心あふれる画風で「コロリスト(色彩家)」と呼ばれた鈴木信太郎(1895~1989)の「人形」。色を多用しているにもかかわらず、濁りのない透明感が、モチーフの愛らしさを引き立たせます。
オイルパステルの最大の魅力は、幼い頃の「絵を描く楽しさ」を想起させてくれるところ。大人になった今だからこそ、目と手で楽しんでいただきたい。
(聞き手・井本久美)
《サクラアートミュージアム》 大阪市中央区森ノ宮中央1の6の20(TEL06・6910・8826)。午前10時~午後4時半。(日)(月)と11月23日(祝)休み。無料。2点は、企画展「色彩の表現 色を翻訳する」(12月8日まで)で展示。
主任学芸員 清水靖子 しみず・やすこ 専門は描画材料の研究。各種絵の具の歴史、組成、絵画技法など。著書に「クレパス画事典」。 |