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美博ノート

「呼継茶碗(よびつぎぢゃわん) 銘 ねこなんちゅ」

川喜田半泥子の遊び心 銘の達人(石水博物館)

「呼継茶碗(よびつぎぢゃわん) 銘 ねこなんちゅ」
昭和10年代

 上からのぞくと、黄褐色の皿が見える。拾ってきた古瀬戸の欠けた小皿に、自邸があった津市の千歳山の土を使って上部を継ぎ足した本作。収められた曲げわっぱのふたの裏には、「人みな珍盌(わん)ちんわんといふ」と記されている。銘の「ねこなんちゅ」は、「わん」を犬にかけて猫に見せたら何と言うかな、という意味。半泥子(はんでいし)のユーモアがあふれる。
 半泥子が本格的に陶芸を始めたのは55歳ごろ。北大路魯山人(ろさんじん)とともに「東の魯山人、西の半泥子」と称された。「魯山人が料理を究めるために陶芸の道に入ったのと同じで、半泥子は茶道を究めるためだった」と主任学芸員の龍泉寺由佳さん。あくまで趣味。自分の思うままに作陶し、自由に銘を付けた。生涯に手がけた陶芸作品は3万とも5万とも言われ、その大半が茶碗だ。

(2017年3月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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