新訂万国全図 東半球・西半球(写)
日本が中央に。江戸の最先端世界地図。
ざっくり5色で分割された画面。ほとんど線がなく、極限まで単純化された構図ながら富士山とわかるのはデッサン力、構成力のたまもの、と学芸員の橋本莉緒さんは話す。
作者の福田平八郎(1892~1974)は大分県出身、画家を志して京都市立美術工芸学校で美術を学んだ。初期は写実性にあふれた緻密(ちみつ)な表現が得意だったが、次第にモチーフを単純化した抽象的な表現に変化していった。
鋭い観察眼を生かし、対象がもつ雰囲気や美しさを抽出した表現が特徴。抜群の色彩感覚で「色彩の芸術家」と呼ばれた。晩年の作品と考えられる「初日之出」は、その集大成といえる。「とくに背景の夜明けの色が美しい。色紙サイズでありながら、富士山のエネルギーを強く感じさせる作品です」。
古くから人々に親しまれる富士山。季節や天候、見る角度によって様々な顔を持つ姿に多くの画家たちも魅了されてきた。今展ではそれぞれの心がとらえ、表現した富士山の絵を所蔵品から紹介する。