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ひとえきがたり

陸別駅(北海道、ふるさと銀河線りくべつ鉄道)

夢の運転士 「出発進行!」

陸別駅
在原里来ちゃんの将来の夢は「車掌さん」。指導運転士の熊谷さんに見守られて列車が走り出した
陸別駅 地図

 大阪府の小学6年生、稲葉真央君(12)が列車の扉を閉め、汽笛を鳴らす。親子3代、総勢16人の親族で借り切った車内から歓声が上がる。指導運転士に促され、右手でブレーキを解除し、左手のレバーを動かすと、28トンの気動車がゆっくりと動き出した。「運転士になる夢、かなったね!」。母の亜希さん(38)が笑いながら、制帽姿の息子にカメラを向けた。

 陸別町の「りくべつ鉄道」は、本物の気動車の運転を体験できる保存鉄道だ。2006年に利用客の減少で廃止された北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線の陸別駅や周辺の線路、車両を町が買い取った。観光資源として活用する道を探る中、町商工会が中心となり有限会社を設立、08年4月に運転体験を始めた。

 昨年4月には、片道1・6キロを2往復する「銀河コース」も登場。山あいの林を走り抜け、鉄橋をくぐるルートは、最高時速20キロ。決まった速度での走行や定位置への停車など、腕の見せどころが満載だ。3万円の料金にもかかわらず、昨夏に続き今年7~8月も、開催日は予約でいっぱいの盛況になった。

 指導運転士は10人。旧高原鉄道のOBもいるが、6人は「りくべつ鉄道」で運転を始めた。熊谷亨介さん(22)もその1人。3年前に観光客として初めて運転して以来、たびたび駅を訪れ、町の商工観光推進員に選任された昨春、埼玉県から移住した。「地域おこし協力隊」として町主催のイベントなどもこなす。「日本有数の長距離運転と、森の中を走る爽快感を楽しんで下さい」

 文 岡山朋代撮影 上田頴人

 

 北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線(廃線)は、池田駅(北海道池田町)から北見駅(北見市)まで、全線140キロの間に33の駅があった。

 りくべつ鉄道での運転体験は3コースある。

 ▼「Sコース」=駅構内の500メートルを2往復。身長130センチ以上であれば体験可能。2000円

 ▼「Lコース」=連結器の検査など気動車の点検作業と、駅構内500メートルの運転(ポイント切り替えあり)。18歳以上が対象。2万円

 ▼「銀河コース」=Lコースの体験者が対象。3万円。

 Sコース以外は要予約。今年は10月27日(日)まで。

 問い合わせは事務局(0156・27・2244)。

 駅から徒歩約5分の正己秦(まさみはた)食堂(TEL0156・27・2048)は「ミシュランガイド北海道2012特別版」で紹介された人気店。

 自家製粉した道産のそば粉を100%使い、手打ちしたかしわそば(900円)が売れ筋。

 午前11時~午後7時。(日)休み。

かしわそば

  

(2013年9月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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