森万里子作(東京都港区) 滑らかな曲線が美しい弧を描いて上昇しては、緩やかに下りてくる。
尼崎市記念公園に置かれた、奇妙なモニュメントの中で、子どもたちのはしゃぎ声が響く。作品は長さ25、幅8、高さ6メートルの鉄でできた管状の滑り台。記者も童心に帰って一気に滑り降りると、心臓が高鳴った。
形のモチーフは「宇宙から来た生物」。生物の尻から入って、口から滑り出る構造だ。「近所の子どもらに相談して決めたんよ」と話すのは作者で、神戸で鉄を使った作品を作り続ける美術家の榎忠さん(72)。
1986年、尼崎市制70周年の記念事業の一つとして市から依頼を受けて制作。名前は尼崎の母を意味し、体内で遊ぶ子どもをイメージした。色はピンクや青を要望されたが、子どもは怖いものに魅力を感じるという考えから、黒にしたという。
しかし、設置してしばらく経つと、不良たちのたまり場や、ホームレスのすみかになり、苦情が出たため、立ち入り禁止に。榎さんが市にかけあうなどして、約5年後に誰もが遊べる状態に戻った。
現在、中は落書きだらけだ。それでも、いたずらの証しとして消さない。「鉄だから100年、200年残る。そうやってつながっていく」と榎さん。設置当時、高校生だった南雅夫さん(46)は、25年後には二児の父として滑り台で遊んだ。「ずっとあのまま。古くならないですね」
(吉田愛)
尼崎市のアート発信 工業都市として発展してきた尼崎市では、現在若手作家のアートを発信する活動が進んでいる。阪神尼崎駅から徒歩15分の「あまらぶアートラボ A‐Lab」は、作品の展示やワークショップを開催。毎年、全国の大学などの新卒業生の作品が並ぶ「A‐Lab Artist Gate」も展開している。問い合わせは市都市魅力創造発信課(06・6489・6385)。 《AMAMAMAへのアクセス》JR尼崎駅から徒歩約10分。 |
阪神尼崎駅から徒歩5分の世界の貯金箱博物館(TEL06・6413・1163)は、62カ国の近現代の貯金箱約1万3千点を収蔵する。西欧のマイセン窯などの陶磁器製や、米国のからくり仕掛け、日本の福助やおかめなどユニークな貯金箱が並ぶ。午前10時~午後4時、原則(月)休み。
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